新潟風雨編3 まぶらほ〜もっともっとメイドの巻〜/築地俊彦[富士見書房:富士見ファンタジア文庫]

 さて本書はまぶらほ外伝メイドシリーズの続編である。本書の前巻である「もっとメイドの巻」を読んだのが9月21日の兵庫県糞田舎へと逃走中の新幹線内であり、その3日後の9月24日13時5分に本書は我が兵庫県糞田舎の新鮮古本東西南北店(仮称)で購入されたわけである。本当は「シリーズものは一年に一冊」を掲げる世界のラブコメ王の俺がそんなことをしてはいかんのだが、本シリーズ2大ヒロインの魅力に抗することができず買ってしまったわけである。まあ英雄は色を好むからね。
 俺史上一大センセーションを巻き起こした「東電OL殺人事件」を読み終えたのが11月24日23時38分の新潟駅前のビジネスホテル内であり、その後俺はすぐ本書を読み始めた。我が人生初の一人旅であるこの期間に読んだ本が「朱色の研究」と「東電OL殺人事件」では俺らしくない、やはり俺の本分はラブコメなのであり確かにこの遠き地・新潟のBOOKOFFでラブコメ本を購入はしたがそれと実際に読むのは別であって、せっかく東京からわざわざ持ってきたものでもあり俺はやっと自分の世界であるラブコメに、ここ新潟でも没頭することができたのである。しかし東京に住む俺が兵庫県の糞田舎で買った本書を新潟で読むというのもまた面白い話だ。
 というわけで繰り返すが本書はラブコメ(2002年度ラブコメ大賞14位、ただしこの外伝メイドシリーズは特別に日本ラブコメ大賞2007にエントリー)である。そうでなければこの俺が富士見ファンタジア文庫なる勧善懲悪の阿呆の単細胞の頭スッカラカンな作品群を相手にするわけがないではないか。「萌え」などいらぬ、ただラブコメがあればよい。
 本書には二つの点が強調されている。一つは本作の2大ヒロインが共に男主人公にぞっこんであるということだが、そのあたりの詳細は日本ラブコメ大賞順位発表で明らかにすることにして、強調されているもう一つの点は作者が完全なミリタリーマニアでその知識を使って本編で盛んに遊んでいるということである。作中にはミリタリー専門用語が飛び交い、そちら方面にはとんと疎い俺などわけがわからぬ(わかったのは「ウラヌス作戦」「ディエン・ビエン・フー」「イスラムの三日月」「ランチェスターの法則」ぐらい)が、巻末の「国際コスチューム会議」資料や「MMM各中隊解説」等の軍事史パロディ的世界は大変面白かった。これは俺の政治マニア的感性と一致するものがある。特に「国際コスチューム会議」各コスチューム組織紹介のところなど、「内部対立が激しい」「理論派による統制の見直しが」等本格的かつ洒落っ気たっぷりな書き方は読んでいて思わずニヤニヤしてしまうではないか。
 しかしこれをあの勧善懲悪の阿呆の単細胞の頭スッカラカンな作品群が跋扈する富士見ファンタジア文庫でやるというのも非常に惜しい話だ。新書サイズのノベルス版として出してはいかがかな。