オーパーツ・ラブEX!/ゆうきりん[集英社:集英社スーパーダッシュ文庫]

 さて8月のあの暑い日にBOOKOFF綾瀬駅前店で105円で買ったのは日本ラブコメ界の重鎮・「オーパーツ・ラブ」シリーズ番外編たる本書である。しかし2005年10月発行の本を2007年8月に105円で買えるというのは嬉しいというより気の毒になってしまう。まあそこらへんは経済合理主義市場原理主義の成せる技なんでしょうなあ。
 しかしこのようなライトノベルスには仕方ないのだろうが17だか20だかのガキを「一国の主」云々とするのはこれはもう本当に阿呆かと言いたくなる。それはまあ俺は政治的変態嗜好を持つ者だからそう思うのだろうが、一国の主というのは52歳の自民党名門派閥のプリンスを重責で押し潰してしまうほどつらく巨大なものなのだ。それぐらい考えたらわかるやろがボケ。ただでさえ本書で書かれる何とかりんご姫というのは小倉優子とかいう頭のおかしな精神病院直行女のパラレルワールド的存在なのであり、そんな奴に一国を司ることができるか糞たわけ。そんなもん違和感なく読める奴がおったら俺はそいつを精神病院に入れるわい。
 いつものラブコメ、というより主人公(ひきこもり駄目駄目高校生)誘惑合戦はいつものように素晴らしいので特に言及しないが、本書の設定である「パラレルワールド」とやらは無理がある気がする。それはまあ「エジプト神の生まれ変わりや狐の妖怪を認めておいてパラレルワールドを認めないわけにはいかない」のだろうが、しかし前者はファンタジーであって後者はSFである。こんなことを書いてはファンタジーファンに怒られるであろうがファンタジーにはその現象の説明などなくてもいいがSFを一時の現象として話の展開に持ってくるならばその説明が必要になろう。特に本書はあくまでSF的手法を使ってキャラを動かすキャラクター小説のしかも長編なのであって、SF的現象を描写してその現象そのものを説明せず描写するだけでいいSF短編とは違いSF的手法の上にキャラクターを動かすのであるからキャラクターを動かす土台としての説明がなければ絵に描いた餅なのである。まあライトノベルスにそこまで期待してはいけないのだろうが、本書は優れたラブコメでありストーリーとしてもなかなかよくできた作品であるから言わせていただくのである。ちなみに本書の1巻は2001年9月4日に今はその面影も残っていないジュンク堂書店明石店で買って以来6年の付き合いであり、「ふたりエッチ」に次ぐ長期作品であると言えばその凄さがわかるであろう。