15 ベルサイユ胃腸薬

 
 2007年がやってきた。2004年から2005年が、2005年から2006年が漠然とではあるが俺の中で何とか消化できたのに対し2006年から2007年はこれはもう全く俺の中で消化できないどころか恐怖と憎悪の対象でしかないのだ(何を言っとるのだ)。一日一日を経る毎に悪くなる俺の肉体と精神と周辺状況にすっかり震えおののき願わくばもう一度2006年よやって来い今度はうまくできるから。ああ、ああ、ラブコメよ!
  
ぶっとび!!CPU/新谷かおる白泉社:JETS COMICS]

 もういい加減過去を振り返るのはやめようではないか特に大学生時代を「酒池肉林」とか「絶対支配」とか言ってありもしない過去に陶酔するのは。もう2007年なのだ。1年前どころか2年前も俺は社会人だったのだぞ。年末年始の帰省ではっきりとわかったが今やこの東京が俺にとって第二の故郷なのでありいつ転勤になるかわからないうちはできればこの東京住まいの時間を大切にしたいとさえ感じているのである。いっそ家族をこの東京に連れてこようかとさえ考え始めた俺は何なのだ。結局俺は適応できる人間だったということか。金儲けが至上命題の民間企業で管理部門の人間として社内官僚の地位を磐石のものにすれば俺の未来は明るい。同僚が俺に言った「お前は殺されても死なねえよ」の意味を考えるのはずっと後にしよう今はただひたすら守れ。
 2002年12月。酒池肉林のまさに絶頂期(としか言いようがないのよな)に大阪の阪急淡路駅前商店街にあった狭く薄汚いアニメビデオ専門のレンタルビデオ屋を思い出すといつも頭に浮かぶのが本作のOVAである。第一次大病戦争が終結ヤマト運輸と郵便局のバイトが軌道に乗り政治学の文献を読み漁りラブコメ探索に耽っていたあの頃に本作と出会ったのでありそのような思い出と本作はワンセットなのである。パソコンを買ったと思ったら実は人型パソコンでしたえらく可愛い女の形をしており何と主人公の精液をパワーの源にするということであります。わははははははははははこれぞラブコメの特権であるが本作の場合主人公とそのアンドロイドの間に流れる「ラブラブな気分」(DVDの紹介文より)が強固でありそこが気に入ったのである。2002年12月のヤマト運輸と郵便局のバイトは殺人的な忙しさであったが病状の安定と仕事の慣れによる余裕、そして何より自分が「バリバリ働くことができる」嬉しさに身を任せていた。本作品全3巻を12月15日・28日・29日に一気に買ったというのも当時の俺の勢いが感じられよう。あの頃は確かに楽しかったな。
  
エンジェルノート/こやま基夫集英社ヤングジャンプコミックスウルトラ]

 よく考えたらこの「脱走と追跡の読書遍歴」シリーズ自体が「ラブコメ政治耳鳴全日記」をやる前の2004年以前に出会ったラブコメを紹介するのだから過去を振り返るのは当然ではないか。というわけで本作であるが1巻は1998年7月には発行されておきながら俺が手に取ったのは2001年である。はて1998年当時も血眼になってラブコメを探していたはずだがいかんせん俺には1999年4月6日の発病以前の記憶がほとんどないのでよくわからぬのだ。しかし最近YouTubeでその当時の歌謡曲やTV番組を大量に観ることができおぼろげながらあの日の記憶が甦ってきている。俺のこの孤独癖と被害妄想的思想は発病によるものでありそれ以前(1999年4月6日以前)はもっと快活な明るい青年であったといつの間にか定説化していたが昔の映像を観ると共に思い出したその当時の俺はやはり一人で行動するのが好きな臆病な中学生高校生だったのだ。まだ耳鳴りもなく全てが健康体だったあの頃は大音量でラジオを聴いていたものだ。だがそれがどうした今は2007年俺はもう24になるんだぞ。
 本作品の購入時系列は1巻(2001年5月29日)・2巻(同年同月30日)・3巻(同年6月11日)・4巻(同年8月25日)・5巻(2002年7月24日)であるが本作品はもっぱら2001年5月・6月の印象しかない。同年4月に大学入学を果たし5月にはもう大学へ行かず三宮の本屋古本屋から地元兵庫県糞田舎の古本市場等を闊歩し怠惰と自由を満喫していた俺だが同時に第一次大病戦争及び我が家限定の経済恐慌最大のヤマ場となる2001年10月への伏線が着々と組まれ、「何だかよくわからんが悪い予感がする」と日記に書かせている。また母のパートの関係で新聞配達のバイトを始めたのもこの頃である。この新聞配達のバイトはあまり多くのことを書きたくないぐらいひどいものであったが、高校を出たばかりの社会を知らぬ青二才が野蛮と粗野の宝庫たる新聞配達連絡所(読○新聞)に行っちゃいかんよ。
 こちらはアンドロイドと言っても主人公の父が開発した女サイボーグとのラブコメであり必然的に主人公と一つ屋根の下に暮らしあなうれしやラブコメとなる。父が開発したということは擬似兄妹であり女サイボーグははじめから主人公に好意を抱いているのだが、この女サイボーグはまあ変身もでき元に戻す時は主人公の接吻が必要となるのである。それでラブコメ。夜2時から朝6時まで新聞を配っていたあの頃、やがて阿鼻叫喚の日がやってくることを俺は知らない。もう遠い昔のことだ。今は東京でサラリーマンをしているのだ。