Ⅱ 戦争回避

 おお2005年が終わり2006年がやってくるなどと誰が言った。こちとら何もかもが終局へと向かって突き進んでいるのだ。東京に残るか、それとも兵庫県の糞田舎に帰るのか。このまま秋葉原を支配しメイド喫茶で快楽を貪りあげくの果てに銀座の高級キャバクラに接待されてしまうのか。だが俺にとってラブコメと政治はもはや揺るぎないライフワークなのであり、原因不明の病と生まれつきの臆病心臓を抱えてあと何年生きられるかわからぬが所詮大したことではない。金があろうがなかろうが死ぬときは死ぬのであり最愛の家族ともいずれ別離が来るのである。秒針が進むごとに死と別離に向かう日々のなかで、俺は俺が最善と決めたことをやり通すしかなく、その結果が何であろうとこれは俺の物語なのだ。
 と、いうわけで生涯の大事業の一つに数えられる日本ラブコメ大賞(一般部門)の発表である。今や「親父に呼ばれて実家に帰ったら従妹が許嫁になって待っていた」とか「週末従姉に婿にならないかって言われた」などというラブコメのようなエロゲーのような現実が存在するのだが、そしてそれを外から見ていると楽しいがいざ自分がその立場になったらあな恐ろしや恐ろしやと勝手に胸を撫で下ろしているがそんな話はどうでもよい。とりあえずノミネート作品は前回12月4日を参照いただきたい。まあただでさえ足場もままならないワンルームの家(俺、世帯主)で更にこれらの本を床の上に並べてみて順位をつけようと舌なめずりしながら眺めるのは屋根裏の散歩者のような快楽である。こういう事があるとつくづく自分は少数派だなあと思うのだが、そう思うことで更に背徳の快楽成分が体内増量され、閉鎖性というぬくぬくぬるま湯の世界を増幅させるのである(最近はこれに2ちゃんねるメイド喫茶が加わった)。文句あるか。そんなわけでカウントダウン方式でいってみよう。
  
第22位 ぼくの彼女はウェートレス/重野なおき芳文社:MANGA TIME COMICS]

 「俺の行動範囲内にある二つしかない大型古本屋のうちの一つ」である古本市場AKIBA PLACE店で10月1日に273円で買った本書は、タイトル通りサラリーマンといきつけの喫茶店のウエイトレスがカップルの四コマ連作である。四コマであるからもちろんラブコメ的なものが主ではなく、気楽に読めるほのぼのタッチのコメディということで形式上最下位となったが、読んでいて不快な感じはしない。主人公たるサラリーマンはまさに平均的な(=優秀ではない)サラリーマンということで思い入れもある。しかしこういうラブコメとは全然関係ないところでふと二人の仲睦まじい姿を見せられると俺は興奮してしまいます。ん。俺はまた何を言ってるのかね。
      
第21位 さくら咲いちゃえ/私屋カオル[白泉社:JETS COMICS]

 本書は、あの伝説となった「みちのく和姦の旅」で明らかに正気を失っていた俺が勢いにまかせて買ったものである。詳細は3月前半の日記を参照して頂きたいが、あの時俺は「最低限のラブコメ条件は満たしている」としてオールナイトラブコメパーカーに認定したのであり、だからこその21位なのである。確かにチビでデブで頭の悪い少年主人公にナイスバディな女がつくのはいいが、だからと言って主人公を下僕のようにまたはアウトオブ眼中(うわあ。使っちまった)的に扱っていいとは限らぬ。何。それは俺の被害妄想でしかないと。OK。被害妄想であっても審査員はこの俺なのだ。賞金を出すのははてなダイアリーだがな。
    
第20位 ツバメしんどろ〜む茜虎徹角川書店:角川コミックスドラゴンJr]

 この作品は実は大変な良作なのである。平凡な高校生に突如人外の化け物が襲いかかるわけだがそんな彼を護るのが少々ブラコンの入ったお姉さんである。血はつながっていない。いや別につながっていてもいいが、何と興奮するシチュエーションか。絵柄もまことに性欲をそそる(こんなこと書いていいのかな。ま、いいだろう)。では何故20位か。何が問題か。簡単なことだ。主人公を「いい人」にするあまり、全く人間味のない「いい人」にしているのである。反論は許さぬ。雨のなか捨て犬がうずくまっているからといってわざわざ傘をかけてやりしかも自分はずぶ濡れなどという描写があるのはもう誰が何と言おうといかんのである。小学校低学年ならまだしも高校生がそんな事をするわけがないではないか。この阿呆め。その描写が俺の目に入った途端本書は全くの絵空事となり深い失望が拡がるのである。自分でいうのも何だが俺は冷酷な人間ではない。だが繰り返し述べているようにその作品世界に登場する人物たちは前提として我々と同じ思考形態をしており我々と同じ日本文化圏の中にあり三食を食べトイレにいき夜は寝るという、つまり俺及びその他のこの現実にいる人間の延長線上にある人間なのだから我々と同じ感覚でなければ意味がないのだ。二次元世界を描写する上でもそれは我々三次元の者を納得させる描写でなければならないのだ。そんなことを言うのはお前だけだとおお激しくYES今すぐここから出ていけ。
           
第19位 君が望む永遠[スタジオDNA:DNAメディアコミックス]

 さて本書は何を隠そうエロゲーのアンソロジーである。ゲームや映像だけが手元にあっても不安でしょうがない俺はどうしても本を求めてしまうのである。大体エロゲーにしてもアニメにしてもそれ単体として成立しないではないか(エロゲーにはパソコンが、ビデオにはTVとビデオデッキがいる)。その点「本」の持つ機能性と経済性には目を見張るものがある。というわけで本書であるが、大体アンソロジーという性質自体が当たりもあれば外れもあるという残酷な代物なのだが、本書を読む限り数編の外れを除いては標準的なラブコメである。主人公の恋人が事故に遭い植物人間化してしまった後、主人公はその恋人の親友と関係を持ってしまうのだがその元恋人が三年後に目覚めておお麗しき三角関係。修羅場というのは外から見ていて大変いいものだ。特に男一人に女複数というのは実に気持ちがいい。は。そんな事を言うあなたの目は腐っていると。わはははははははははははははは。
          
第18位 To Heart2 アンソロジーコミック [フォックス出版:FOX COMICS]

 さて本書もまたエロゲーのアンソロジーである。こちらはまさしくお気楽極楽の学園生活色事三昧というやつで、こういうのを読むと若々しくなるのは俺だけか。ただひたすら目をつぶって嵐が去るのを待つようにして沈黙の学生生活を送った俺にはどうも「青春はもう終わった」的な実感が湧かないのだが、そのようにただひたすら自らを恍惚の中に閉じ込めて生きていく俺だからこそラブコメが必要なのである。何の話だ。とにかく訳もわからぬうちにあの女もこの女も主人公(俺)の虜なのである。俺はタマ姉一筋だが、いやそんなことはともかくみんな主人公(俺)に夢中なのである。それではつまらんというが、残念ながら俺はそっちの方が面白いのである。つまり女性を自らの支配下に置いてからがパーティーの始まりなのである。いかん話が生々しく変態的になってきた。大体こんな表紙見せられて買わない奴がおるのか。
       
第17位 ラブ・ハニ/ジェームスほたて少年画報社:YKコミックス]

 本書は非常に思い出深い作品である。それはこの本が東京に来てはじめて買った本だからというわけではない。はじめて東京で見つけた大型古本屋で買った本だからでもない。本書は4月29日に、もう二度と東京へ戻るものかと田舎へ逃げ帰る寸前にせめてもの思い出にと買った本なのである。そうだ確かゴールデンウィーク初日のあの日俺は朝会社に来て会社のパソコンからこの日記を更新してそしてもう周り全てが恐ろしくなって急いでダンボールだらけの東京の家に戻って銀行通帳とカードと免許証だけ持って東京駅へ向かったのだ。その道中で俺はあの大型古本屋に行ってこの本を買ったのだ。そして新幹線に乗って実家に帰ったのだ。何とあれからまだ一年も経ってないのか。本を買う本を読むということは本そのものと同時にそれを買って読んだ日の光景を自らに植え付けるということなのだ。で、本書であるが基本的にはエロい方のラブコメである。主人公の家は父子家庭だが父親は一年中仕事でどこかへ行っており、広い家で一人暮らしを楽しんでいた主人公にあら何と美人三姉妹がやってきましたよ。よくもまあ飽きずにそんなものばかり読んでられるなと言われるかもしれんがさにあらず。本書は胸の痛くなるような純愛と家族愛が詰まっているのだ。まあエロいのはエロいが。しかしせっかく三姉妹いるのだから3人ともに主人公に言い寄るべきではないか。いやそうすべきだ。
          
第16位 新・幸せの時間/国友やすゆき[双葉社:ACTION COMICS]

 いやいや明らかに場違いだ。この日記の読者層は明らかに10代後半から30代ではないか。更に不可解なことに固定読者のうち7割が女性という困惑の海に溺れそうないやそんなことはどうでもよい。双葉社で週刊漫画ACTIONで国友やすゆき。明らかにオッサンサラリーマンが電車通勤での暇つぶしのために読む漫画である。だが既成概念をぶち破る奇跡の変態こと俺には何でも来いである(ラブコメなら何でもいいだけだろうがという声が聞こえる)。そもそもこの劇画チックなムチムチボインな女の誘惑に負けて買った、というのでは決してなくて内容がちょいラブコメしてるのである。即ち主人公(30代前半?)は電車男的に嫁をもらいついでに職も見つけ(嫁の父の会社に縁故採用)、嫁の両親とも仲良く二世帯住宅な生活を謳歌するのであるが、ここに妻の妹が登場するのである。おお。何故だか知らんが惹かれあう主人公と義妹。不審に思う妻。また主人公にストーカー的に執着する美人部下(これがまたいい女なんだ)までいる。何と平凡な30男に女3人。素晴らしい。普通ならここでコメディとなるところだがそこは劇画である。ねっとりとからみつくような官能が俺とあなたを襲うのである。
            
第15位 もてね!?/甘詰留太白泉社:JETS COMICS]

 さて今年日本ラブコメ界でブレイクした二人のうち一人が本書の作者である。後で紹介する同作者の「年上ノ彼女」が良かったのでこの本をMelonBooks秋葉原店で買ったのだが、2週間も経つと大型古本屋に売られてあった。つまりその程度の本なのである。いや別に俺は本書を悪く言うつもりはない。事実本書はラブコメとしてなかなか見応えがある。だが明らかな失敗点が二つある。一つは帯に「童貞の気持ちが日本一わかる漫画家」と書かれてあるにもかかわらず、ヒロインが主人公以外の男と交わっているところを生々しく描写したところである。この本は大量に生産されては虫ケラ扱いされた挙句消えてしまう成年コミックとは違い、一般青年コミックなのだ。作者に寝取られ属性があろうがなかろうが、いまだ女を甘い幻想の蜜の彼方に想う童貞(つまりこのような本を買う読者)が、成年コミックとは違う一般青年コミックを買ってそして求めるストーリーはそういう蜜に包んだエロさなのだ。本書のようにたとえ主人公が天邪鬼で知らぬ間にヒロインが婚約してもそんなに生々しいヒロインと主人公以外の男のアレを見せてはいかんのだ。よしんばヒロインが主人公以外の男とアレをして気持ち良さそうに。おお許せん。例え主人公の夢であろうとそんなものを見せられて黙っていられるか。童貞は独占欲が強いんだぞ。もう一つは。決まっておるだろう、主人公がスポーツ万能(野球が上手い)なところだ。そんな奴がラブコメの主人公なんぞ務めるな。しかしまあこの表紙はそそるな。自慰ができそうだ。
          
第14位 東鳩英雄伝説完全版 第一期 銀河黎明編/ルーシア[オークス:OKS COMIX]

 ええと本書を説明するのはちと難しいな。何せ全く違う二作品を同人誌的な無謀さで一つにしてしまったのだからな。とりあえず言えることは本書のストーリーは「銀河英雄伝説」のパロディであり、登場人物はToHeartや痕等のLeaf(エロゲーメーカー)キャラクターであるということで、いやそれではますます訳がわからんが、そもそも説明することを放棄した同人誌を一冊の商業本にしただけなのだから俺の責任ではない。大体あの銀英伝というのは一応俺の「オールナイトラブコメパーカー」に入っているがそれはヤン・ウエンリーと彼を取り巻く環境がラブコメとしても十分通用する人物であったから入れたまでであって、本編全体にえんえんと続く民主主義への露骨な皮肉や過剰とも言える皇帝の美しさの表現は俺の肌に合わなかった。もちろん本書はそんなことはお構いなく主人公(つまりヤン・ウエンリーでもあり浩之でもある。ややこしいがそれもまたパロディの方法なのだ)の気を惹こうと女性陣があの手この手を使うのであり、主人公になった気分でそれを読むと爽快壮快愉快。ラブコメは世界だ。
   
第13位 ねいちゃあトリップ/ねぐら・なお[双葉社:ACTION COMICS]

 突然だが俺はエロゲーが大好きだ。いやそうではない。正確には「ハーレムルートのあるエロゲー」が好きなのだ。つまり女達が「○○様〜」と言って群がり俺の棒という棒を使ってアレがソレでナニをするのがいいのだが、そんなことより本書だが突如女だらけの世界に紛れ込んでしまった主人公万歳。周りで男は主人公(俺)一人ということは主人公(俺)がどんなにブサイクであっても女達は主人公(俺)に言い寄ってくるのであり、何もしなくてもハーレム気分に浸ることができるのである。またこういう女だらけの世界だと阿呆どもが競ってレズを描きたがるが本書の場合それは微々たるものである(ええそうですよやっぱりあるんです)から気にならない。数々の女に誘惑されおいしい体験を重ねながらも主人公(俺)には既に用意された女がいるというのも安全安心でいいではないか。ここらへんが俺をして「女の敵」と言われる所以だな。わははははは。
    
第12位 DADDY・バージン/克・亜樹少年画報社:YKコミックス]

 さてお馴染み克・亜樹の作品である。別に克・亜樹だから何でも買って大丈夫というわけではないのだが、作者はここ最近どうも俺好みのラブコメばかり描いている気がする。俺が気に入るということは完全に少数派ということであり、大層まずいのではないかとも思うのだが、とにかく本書は短編集である。いずれも平凡を絵に描いた男にかわいいかわいい女がピッタリとくっつくのであり何故ピッタリとくっついているかの説明はなされていない。それでいい。それにしても克・亜樹の描く絵はそれが男女の交合であっても清潔感漂いかつ優しい女(都合のいい女)ばかりなので現実の女の醜さや現実に日夜行われている性行為の生々しい不潔感から目をそらしたい俺は満足である。そして何度も言うように俺が理想とする「既に女の方が男を好いている」状態を最も簡潔かつスマートな形で表現してくれるのが克・亜樹である。文句がある人は株式会社はてなの社長兼苦情部長までどうぞ。
   
第11位 青空の街/池波正太郎集英社集英社文庫

 さあ出た2005年のダークホース第一弾。10月15日、東京神保町の名もない古書モールで105円で買った本書はまさしく青春小説という名にふさわしい良作である。普段なら「青春だと。この阿呆めが」と天に唾を吐くこの俺が言うのだからもちろんラブコメである。いや単に俺がそう解釈してるだけの話だがこの各分野に渡る俺の目利きのよさを見よ素晴ら。あれまた自己陶酔に入っておるな。全くもういつになったら治るんだ。とにかく本書は建設会社社長の息子でありながら働く意味を見出せない主人公とその主人公を見守る温かい人たちが繰り広げる大変にぬるま湯な作品である。少なくとも社会人一年生の俺はぬるま湯だと感じたのだが、このような優しい人がいてこそラブコメ展開も起こり得るのかもしれぬ。要は俺が納得できるようなリアルさが描かれていれば問題ないのだが、本書の特異なところは「この登場人物たちは社会人にしてはずいぶんと優しいというかおおらかな人ばかりだな」と思わせながらもそれに反感を抱かせないところであって、そのような優しい世界に読者を引きずり込む手腕は尋常ではない。北杜夫の「奇病連盟」もそうだが、昔はこのような庶民の哀歓を軽やかに暖かく見守る作品が多くあったのだ。庶民ということはもちろんラブコメ的なおとなしくて無口な青年も登場するわけであり、そのような庶民青年がなぜかもてる話を聞きたいのが今も昔も変わらぬ人情というものだ。
   
第10位 マジキュー4コマ 月姫エンターブレインマジキューコミックス]

 さてついにベスト10の発表である。10位は皆さんも記憶に新しい、あの国立国会図書館をたった一人で占拠したという「東京自転車弾鈍戦」にて攻防の中心にあった「月姫アンソロジー」の四コマ・エンターブレイン版である。あの後国会図書館では児童何とか法違反の図書を閲覧するには原則届出が必要になったらしいが、それは明らかに俺がWEB上であのようなことをしたからだというのは自意識過剰であろうか。ここ最近国会図書館に行ってないので今度行って是非またやってみよう。我らの税金で食い倒している公務員に何の遠慮がいるのだ。ああ公務員公務員。一瞬でもいいからなりたい公務員。それはいいとしていや全然よくないのだがとにかく「月姫」である。2002年度ラブコメ大賞(おお俺はまだ大学生大学生大学生)を受賞してからはや三年。その息の長さに驚くばかりだが、変わらずにアルクもシエルも秋葉も弓塚も主人公(俺)に夢中で安全安心。しかし世にエロゲーアンソロジーは数あれど月姫ほどラブコメ度が濃いものは珍しい。主人公がその生い立ちはともかく外見上は平凡な高校生なのでそれだけでも十分満足なのだが、このように長くラブコメとして通用するのはオリジナル「月姫」の人物相関図がラブコメなしには成立できないほど濃密かつ微妙な線の上に立っているからであろう。即ち各キャラクター(主人公の相手をする女)は自分自身で独立して物語を持っているが、それら独立したそれぞれのキャラクターの物語が重なって本編となり、その各キャラ(各物語)を結ぶ中心に主人公がいるのである。だからこそ「主人公がいないと話が成立しない」のであり(中心がいなければ交わらない)、主人公が平凡で無口な男(ただし無力ではないが)でその他キャラが女である以上、話を作ろうとするならば必ずそこにラブコメが発生するのである。そんなわけでラブコメ万歳。
    
第9位 年上ノ彼女/甘詰留太白泉社:JETS COMICS]

 本書もまた、思い出深い作品である。本作品の1巻は3月27日、兵庫県の糞田舎の大型古本屋で買ったものであり、その頃の俺は社会人として一歩を踏み出す事に怯え恐れ必死に逃げていた。もうこの22年間見慣れた風景と別れを告げなければならないという前代未聞の事件を前にして、何もできずただひたすら考えることを放棄していたのだ。2巻を買ったのも8月に実家に帰省した時である。俺にはシリーズものは同じ店で買うというおかしな癖があるので、本作品の3巻も年末実家に帰った時に買うことにしよう。さて内容であるが主人公(インポ)の前に突然現れた夢に出てくる小柄な女(25歳)とよくわからんが(まあ一目惚れにしておこう。その方が女性読者の反感も少ない)同棲することになるのであるが当然ラブコメであるからして他にも主人公に夢中な女はいるのである。ところがそこから話は急展開してヒロインには実は色々と過去があり、2巻では姑の下へ帰ってしまうヒロインを主人公(インポで被害者面)は何と留年覚悟で追いかけるのである。この辺りの積極性はラブコメの主人公として許されるか否か議論が分かれるところである(特に留年など親の臑かじっておきながらできるわけがない。少なくとも俺は無理だ)が、要は違和感なく俺が感じることができればいいわけであり、本書の主人公はその平凡性を保ちながら若者特有の無鉄砲さを「遠慮しつつ」出しており(つまり極力大騒ぎしないのである)、俺は好感を持った。やはりいかに頼りないラブコメ男といえども好きな女のためには一肌脱がなきゃ駄目よ。ん。俺は何をまともな事を言っておるのだ。
    
第8位 双恋 ノベルズ/双葉ひなささきむつみ金閣寺ぷるる[メディアワークス

 東京及び会社が恐ろしくて実家に一目散に逃げたゴールデンウィーク、学生時代と同じようにそこにあったMelon Books三宮店で買ったのが本書である。もう二度と東京になど行くものか俺は永遠にこの兵庫県の糞田舎から出ないのだ怠惰と惰眠を貪る堕落したひきこもりになるのだと心に誓った日に俺は何を思ってこの本を買ったのだろう。「シスプリ」「ハピレス」シリーズでお馴染みの女性一人称の砂糖味120%ラブコメであるが、本書の特異な点は女性一人称で書かれてありながらその女性はあくまで男の理想像にかなうものであるということであって、つまり「女がこんな風に俺に突然一目惚れしてしかもベタ惚れだったらいいな」という願望通りに各女性陣が描かれているのである。その事によって俺は安心する。なぜなら女性一人称ではっきりと「主人公(俺)が好き」と言わせることによって女の心は既に主人公(俺)のものであることがはっきりとわかるからである。この作品は一人称であるから、それはもう完全に嘘偽りなく女は主人公(俺)に惚れているのである。その結果主人公(俺)は圧倒的に有利な状況下で物事を進めることができ余裕もできる。これは気分がいい。日々理不尽な命令に従うしかない生活を送る俺にとって安穏できる場所、それがラブコメなのである。恋愛とは惚れた者が負けなのであり、惚れさせた者が勝ちなのである。だから俺は恋をしたくはない。向こう(女)が俺に恋するのなら考える。はてこれは世間一般でいうサドというものではないかいやいや俺は。
    
第7位 キューティーハニーSEED/永井豪・星野小麦[秋田書店ヤングチャンピオンコミックス]

 「キューティーハニー」と言えば誰もが知っている作品である。もちろん女が阿呆のように暴れまわったところでどうということはない。俺が求めるのはラブコメなのだ、と思って鼻であしらいながら読んだらこれがとんでもない良作であった。俺はまだ1巻しか読んでないが何せキューティーハニーなど全く関係なく話が進行しているのである(作品内では、TVドラマで「キューティーハニー」をやっている)。では本筋は何かというと「キューティーハニー」ファンな平凡高校生が記憶喪失の少女を拾うのである(王道だ)。まるで「やるドラ」のような展開だが、どうもこの記憶喪失少女は国家機密規模の超兵器らしいのだ(王道だ)。とは言え俺にとってそんなことはどうでもよく、隣の家の同級生やら美人教師やら義理の妹やらが主人公の下に集まるだけで大満足。主人公も女性作家にありがちな優等生でもスポーツ万能でも喧嘩野郎でもなく誠に平凡でよろしい。だが女性作家である以上絶えず「ツバメしんどろ〜む」のような失敗をするかもしれないという危なっかしさがあるのであり、それさえなければこの作品はBEST3には入ってもおかしくない大変な良作なのである。惜しいなあ。女にラブコメなど描かせるな全く。
    
第6位 NHKにようこそ!/滝本竜彦大岩ケンヂ角川書店:角川コミックス・エース]

 本書は「オタク系・アキバ系の王道」であり、何事につけてもメジャーなものを嫌う俺にしては珍しいが6位である。何度も言うが俺はオタクでもアキバ系でもなくラブコメ偏執狂である。どう違うねんと言われてもよくわからんがとにかくあの鬼畜凌辱強姦輪姦ホモレズサドマゾを容認する奴らと一緒になりたくはない。だが俺と「秋葉原軍」は今も昔も変わらぬ最重要同盟関係にあることは間違いない。例えるならば米国と英国のように。加藤茶志村けんのように。それにしても俺もひきこもってみたいものだ。我が家の経済状態がそれを許さんが、せめて1ヶ月、いや1週間でもいいから。そしてそんな世捨て人の生活を送る羨ましい主人公に更に正体不明の女が近づいてくるのである。素晴らしい。作品から察するに主人公は24歳らしいが、全ての物事をネガティブにとらえ、どうにもならない自分にヤケクソ気味に毒づき周りに当たり散らし、ロリコン・盗撮・エロゲーに日夜没頭し、他人の一挙手一投足に敏感に反応しては心臓が破裂しそうになる彼は実に素敵である。それでこそひきこもりというもので、そういう男に女がわけもわからず理由もなく近寄ってくるのはまさにラブコメ。妄想力が生む現代の奇譚なのである。俺が求めているのはそういう物語なのだ。ひきこもりであろうがしがないサラリーマンであろうがそこに自分だけの娼婦、ではなく女が出てこそ華。ただし本書の場合主人公とヒロインは恋仲ではないが、それでも「普通で平凡な主人公の下にわけのわからぬ女がやってきて騒動を起こすが決して主人公に不快な思いをさせたり害を与えたりしない」のであれば基本的にはOKである。要は俺のような消極的な人物を主人公にしてもらうわけであるから、当然話しの流れを引っ張るのは女でなければならない(俺以外の男なんぞ見たくない)のであり、だからと言って主人公に害を与えていいわけではない(俺はマゾではない)。突然ひきこもり男の下に女が現れたのはいいがラブコメ展開を完全に放棄するという非常に罰当たりな殺意すら覚える作品もあるが(特に名は秘すが田丸浩史の「ラブやん」である)。俺も会社を辞めたあかつきには是非ひきこもろう。
    
第5位 湯沢クン飛んだ!!/高野洋[集英社:SCオールマン]

 さて2005年のダークホース第2弾は5位にまで登りつめてしまった。集英社のSCオールマンでラブコメなど滅多にないことだが、ラブコメに関しての情報は光よりも早く俺に届くのである(インターネットがNTTフレッツ光なので)。それはともかく、すっかり秋葉原にも慣れた8月20日に古本市場AKIBA PLACE店で買った本書は、平凡なサラリーマンでありながら空中を飛ぶことができる主人公がただひたすら周りで起こる状況に翻弄されながらもやや棚ボタ的に成功していく(女にもてる)という、ラブコメの基本を忠実に守った良作である。ただし主人公が理知的に過ぎる印象もなくはないが、そのあたりは自意識過剰な俺であるから「これぐらいは俺だってできる」と思うことで問題はない。というよりも俺自身、今現在の仕事内容がわかっているのかわかっていないのか判断つきにくいという微妙な立場にあるからであり、天狗になる日もあれば絶望の淵に沈みこむ日もあり、仕事が好調な時にこれを読んでも何ということはないが仕事で何かヘマをやった時に読むと腹が立つのである。しかしそのような部分はともかく本書は平凡なサラリーマン(つまり俺)でも偶然が重なればヒーローになることもできとんでもない金融大合併の渦中に巻き込まれることもあり女にもてることもあるのだということを認識させてくれた良作なのである。突然自分の家のドアの前に女が座って待っていたらどうしよう。何かワクワクするな。
   
第4位 藤子・F・不二雄短編集[小学館:My First BIG]

 ラブコメに国境なし。このような紙質からして悪い読み捨て御免の本であっても大事に保管するのが偏執者にして変態にして阿呆の俺のいい所。ん。まあ良い。確かに本書はいわゆる「ラブコメ」ではないのかもしれぬ。恋愛コメディではないことは衆目の一致するところであろう。だが本書に収録されている各短編の主人公たちは全て平凡な一市民なのであり、その平凡な一市民が「Sukoshi Fushigi」な世界に巻き込まれていくという展開はまさしく俺の提唱する「ラブコメ」にぴったりなのだ。特に感動するのは最後に収録されている短編「山寺グラフティ」であって、この世のものとは思えないほど素晴らしい純愛ラブコメ作品である。いつから物語はヒーローのものになったのだ。「平凡な人物を非凡な状況下に置く」ことこそ、全てのラブコメの根幹なのである。ラブコメ万歳。
                 
第3位 らいむいろ戦奇譚 天乃原学級日誌/あかほりさとるメディアワークス電撃文庫

 日本のラブコメを狂気と錯誤の道へと導いた戦犯が二人いる。こいつらのおかげで俺はひどい目に遭った。一人は赤松健であり、あの恐ろしいマゾ漫画「ラブひな」が「日本一のラブコメ」と言われた時は死のうかとも思った。あのように女に殴られ蹴られ罵倒されておきながら顔色一つ変えず「トホホ」で済ますというまさしく感情のない人物描写に俺は何度煮え湯を飲まされたことか。そして以後、そのような「トホホ」で済ます感情のない人間が長い間「ラブコメ」と呼称される作品に主人公として君臨し、現在に至る俺の不遇の時代がはじまるのである。まあ買う奴が一番悪いのだが、それももう一人が行った罪に比べれば何ということはない。あかほりさとる、もうこの男のせいで日本のラブコメはおかしくなったのだ。彼の書く「ラブコメ」(と本人が言っている)作品の主人公は全て単細胞で小学生のような幼稚な正義感をあつかましく行使する最低最悪な性格をしており、そのような人間味のない「お人よし」さと偽善に包まれた「優しさ」、更には物事を深く考えない近距離思考を「勇気」「熱血」として、それらが備わっていないとラブコメの主人公たりえないという悪魔の方程式を作ってしまったのである。この男のせいで、ああこの男のせいでラブコメの主人公は「勇気」があって「熱血」で「友情」を大事にし「優しさ」を大安売りし誰彼構わず話しかけるという「お人よし」でなければならないという不文律ができてしまったのだ。何ということだ。この世の終わりだ。全く余計なことを。それら誤った認識のせいで俺が今こうやって白い目で見られているのだが、そのあかほりが昨今の俺の勢いに屈服して書いたのが本書である。まあ主人公が大人で教師ということが大きな要因だろうが、それにしても他のあかほり作品に比べると本書の主人公は落ち着いていて運動神経駄目駄目で要するに平凡なのである。その主人公に言い寄るのが五人の生徒である。特に本書はアニメやゲームと違い全ページがラブコメで埋まっているという変態ぶりで、志は違えどラブコメに関する作者の並々ならぬ決意が伝わってくるのである。俺と作者は新撰組と維新志士の如く、立場は違えど日本(ラブコメ)のために立ち上がった勇士なのである。ナルシズムもここまでいくと救いようがないな。笑ってごまかそう。わはははははははははははははははははは。
   
第2位 赤灯えれじいきらたかし講談社ヤンマガKC]

 2005年の日本ラブコメ界でブレイクした二人のうちのもう一人が本書の作者である。この表紙を見ての通り、主人公たる男は「ヘタレのフリーターでスケベでガキンチョ」であり対するヒロインは「美人で金髪で言葉遣いが悪い喧嘩っ早い」という、まさしく理想的なラブコメが本書でありだからこその2位なのである。問題はその場合のヒロインの横暴さをどこまで認めるかであるが(俺は諸君と違いマゾではないので)、他作品と違い本作品のヒロインは常識的に主人公に接してくれるので問題ない。言葉遣いは悪いが、主人公を虫ケラ扱いするようなひどい女とは違うのである。そんな女がでてくる作品はラブコメではないのだこの野郎め。ヒロインは少しでも相手が理不尽なことを言うとすぐホットになって喧嘩態勢に入るのだが、その喧嘩を男が止めるというのも見ていてなかなかいいものだ。要は観客気分で修羅場を見物できればそれでいいのであり、そういう修羅場とか喧嘩とかの面倒くさいことは全て女の方がやってくれるというのは実にいい。喧嘩をするよりも間に入って止める方が安全でなおかつ現場の臨場感を味わうことができて更には「自分はこいつと違って冷静である」と優越感に浸ることもできるので大層いいではないか。また主人公も「ヘタレのフリーターでスケベでガキンチョ」らしく、あくまで穏やかに大事にならないよう物事を処理しようとしてなぜか次々と厄介ごとに巻き込まれていくという、まさしく非の打ち所のないラブコメなのである。万事につけてそのような全く正反対の二人が中心となって物語が展開していくのであり、見事2位の座を射止めたのである。俺はこのようなラブコメを待っていたのだ。そして主人公(俺)がこういう強気女と恋仲にあるというのは誠に興奮する。一見強気に見えるような女こそ実は母性本能が強くて至れり尽くせり俺にやってくれるのだと想像の羽を広げ大空を飛べ。
      
第1位 電車男原秀則小学館ヤングサンデーコミックス]
    電車男 がんばれ毒男!/中野独人道家大輔秋田書店ヤングチャンピオンコミックス]
    電車男〜でも、俺旅立つよ。〜/中野独人渡辺航秋田書店チャンピオンREDコミックス]




 と、いうわけで「ヘタレ男」と「強気女」というラブコメ最強の布陣を前にしてもなお1位の座を微動だにしなかったのが本書である。作画者・出版社ともに違うのが三つもあるので同率1位3作品。しかし「嫌いなものは他人と納豆とメジャー」と公言してはばからない俺がよりにもよってこのようなものを1位にするとは自分でもびっくりである。しかしいいものはいいのだからしょうがない。大体オタクの秋葉系の童貞青年がだな、自分より収入のある美人OLといい仲になるなんてのはまるでお伽話ではないか。しかし読み返して思うのだが、どうもエルメス電車男に助けられた時点で既に電車男(=俺、ということにしよう)を好きになっていたのでありということはもうラブコメではないか。そもそも電車男は正義感からエルメスを助けたわけではなく自らの良心の呵責(目の前で女が困っているのに知らん振りをする)に耐えれなくなって仕方なくああやったまででありしかも大声で叫んだだけなのだ。にもかかわらずエルメス電車男を過大に評価しているのである。これはいわゆる棚ボタというやつではないか。或いは運命のいたずら、神様の大失投によって見事エルメス電車男に惚れることになるのである。しかも現実で。万歳。もちろん現実にはいきなり後ろから胸を押し付けてくるようなラブコメ女などいないのでこの辺りはやはり二人で徐々に徐々に距離を近づけていく他ないのだが、エルメスが無意識に行うその「電車さん、好きです」的な一挙手一動に俺は激しく興奮してしまうのである。で、気になって仕方ないのがその後であって、電車男エルメスは今も交際を続けているのであろうか。それとももう結婚したのだろうか。俺の考えが特別古いのかもしれぬがやはり結婚しないといくら二人の気持ちが通じ合っていてもふとした弾みに別れてしまう危険性があると思うのである。それはいかん。ラブコメの面子にかけて、せっかくそのようにしてカップルが誕生したのだからそれはもう死ぬまで添い遂げるべきなのだ。こういう独占欲が童貞の特徴だろうなあ。わははははははははははははは。
    
 さて一般部門の審査はこれで終了である。1位には株式会社はてなから200万円が贈られる予定です。総括してみれば、何だかんだ言っても探せばラブコメは見つかるのであり、要は辛抱強く今まで通り本屋古本屋インターネット掲示板をチェックしていけということであろう。ああそれをする時間がない。ますます増えていく仕事量と責任を前に憤慨する俺。だがこの身は全てラブコメと政治のために燃焼すると決めているのだ。誰が何と言おうとそうなのだ。覚悟しやがれ。で、次回は成年部門の発表です。ご期待下さい。