選挙は踊る

 「政策で選ぼう」「マニフェストを活用しよう」という声をよく聞く。選挙というのは金をもらったり地元への利益供与のためにあるのではなく、国の将来を決めるためにあるのだから、具体的な政策争点をみんなで考えそしてそれを主たる判断材料にしてその候補者に投票しようというのである。なるほどなるほど。そこで俺がそう言う彼らに向かって「では外交政策ではA党、財政政策ではB党、教育政策ではC党がいいと思った場合、どうするのかね」と言った場合、どうなるか。大抵の者は「何でそんなひねくれたことを言うのだ。え。あんた、このマニフェストに何か言いがかりでもつける気か。え。全く何という男だあんたは」とでも言わんばかりの眼をして俺を睨むだけだ。しかし実際そのような事態が起こる可能性は極めて高いはずであり、その時諸君はどうするかというと「何で俺たちの思う通りにやらないんだ。国民の視線でものを考えろ」と叫ぶに決まっている。これはもう火を見るより明らかだ。わははははははははははははは。
 情報コストという言葉がある。これは要するに一つの問題に対して考える時間とそれに伴う労力のコストもしくは負担のことだが、この「考える時間とそれに伴う労力」が多ければ多いほどその情報コストが高いといわれる。たとえば今不景気だから公共事業をすればいいのだがもはやそのような予算は国にはなくそれどころか予算の半分が借金という借金大国である我が国にはもう一円たりともそんな余裕はないがしかし防災に関する公共施設くらいは用意せねばならないからやはり幾分かの公共事業は実施しようしかし財源がない税金を上げるわけにもいかないでは消費税を引き上げてそれを財源にしかし消費税の引き上げは年金に使わねばならないからやはりここは郵便貯金の金を使ってなに民営化だとそれは困ったええとどうしようどうしよう何かいい手はないかと考え考えそれでもいい答えが出ないのに考える時間と労力だけが莫大になっていくのを「情報コストが高い」と言うのである。そして普通、一般国民が耐えられる情報コストは極めて低い。なぜなら普段の生活に追われているからである。父は会社に、母は子供の教育に、子供は勉強にと言う風に日々忙殺される中で、一体誰が「イラクのテロ防止が云々」「消費税が云々」を真剣に正確に政策論的に国益上の観点から考えるというのか。そんなものは無理なのだ。
 にもかかわらず「政策中心の選挙」や「マニフェストが政治を変える」といった胡散臭いキャッチフレーズをマスコミも諸君も好意的に扱っているようなのだ。だが「具体的な政策論争」というのは、具体的にどういった状態を言うのかね。仮に公共事業の前年度費10%削減、教育費の前年度費5%増といったところで何のことやらわかるわけがなく、やはり俺を含めた一般国民には「郵政民営化に反対か否か」「自衛隊派遣に賛成か否か」といった平明にして簡単な争点の方がわかりやすいのである。それを「民営化には賛成だがその後の経営形態が云々」とか「誰でも戦争か平和かと言えば平和と答えるがこれはテロ防止の云々」とマスコミは騒ぎ諸君も頷く。それに官僚がしゃしゃり出てきて例えばNTTのように民営化はしたがその結果電電公社より焼け太りになったり特殊法人から独立行政法人にしたはいいがその職員はやっぱり公務員扱いのままにしたりするから事態は混沌を極め、こうなってはもう政治家や官僚の責任ではなくでは誰のせいかというとまあ日本人全員と言うしかあるまいな。いやあ我が国はらせん状の如く様々な問題が複雑怪奇に混ざり合いまことに刺激的だ歌え騒げ銀座の春の一丁目。
 つまり俺が言いたいのは、それぞれが情報コストを負担できる範囲内においてそれぞれ政治を考え投票に行けばいいということであって、マニフェストが正しいわけでは断じてない。それはただマスコミが現時点で思っているだけだ。そしてマスコミが正しいわけでは、これはもう本当に、絶対にいつもマスコミが正しいわけではないのである。大体「地元への利益供与」にしてもそれはそれで経済政策と言えないこともないのであり、一体それの何がいけないというのか。地元だけではなく国全体のことを考えろと言い「外交には国家的視点が大事であり庶民感覚では駄目」というがしかし我々には庶民感覚しかないのであり、その点においてあの感情的な反戦論も容認しよう。最も大事なのは投票に行くことであり政権を自らの力で転覆させることであって、それこそが民主主義のダイナミズムいうものだ。それを「自民党は嫌だが民主党も嫌」だの「小泉は支持するが自民党は支持しない」だの、しまいには「選挙に行っても何かが変わるとは思えないから」だの、一体どうしろというのだ。そんなに選挙がいやなら一党独裁下の経済大国中国へでも行きやがれ。あの国は何のかんの言うとるが選挙がない国なんだぞ。そのようにしていつまでも政権交代させることなくかといって与党を支持することもなくただ愚痴ばかり言っているからこんなにひねくれた政治観しか持てなくなったのだ。見よこの日本の空気を。構造改革には反対と誰も言えぬから表向きは賛成賛成と言って裏では「構造改革なるものは自分とは関係ないところでやってくれ」と言いあれもダメこれもダメとダメ出しをして不完全燃焼やがて暮れゆく灰の海。おお総理よ総理、俺の住むこの糞田舎では銀行などありゃしませんただ小さな小さな郵便局があるのみなのです。おわかりですか総理。
 どうもこの、日本というのは大変ユニークな国でありまあ書き出したらキリがないな。とにかく「マニフェストによる政策で選ぼう」と言ったって政策なんぞ無数にあるのだからこの言葉自体おかしいのだ。まだ「経済政策で選ぼう」「外交政策で選ぼう」というのなら話はわかるが、経済政策で保守的な政党が外交政策で保守的とは限らんわけで、その場合保守的な人間はどうすればいいのだ。なに。それは自分たちの言うことを聞かない政党が悪いと。はあはあ。あのねえ諸君。子供じゃないんだから、欲しいオモチャが買えなくても泣くんじゃないよ。大きくなって、働いて、自分で稼いだお金で買いなさいよ。なあに、諸君なら簡単なことだ。
      
 えっと、この度俺はメールアドレスを取得しました。いやそれまでは大学の方のメールアドレスを持っていたんですがそれでは俺がどこの誰だか一発でわかってしまいますのでこのようにメールアドレスも載せずただ愚痴を愚痴って愚痴にしたような日記ばかり更新しておったわけでありまして、これからは誹謗中傷その他気軽に何でも送ってください。アドレスは「プロフィール」のところにあります。まあHOTMAILなんで、迷惑メールが来てもこっちは知ったこっちゃないぜというこのあの我ながら醜い考えかただな。
 あのう、この日記を読んでる人っているんですかね。いないだろうなあ。でもカウンターが毎日100以上回ってるってことは一人か二人は固定読者が。どうなのかなあ。一応コメント欄はありますけど、まあコメントしづらいですねこの日記は。いたらまあとりあえず何か書いてください。あとリンクですけど、まあリンクしたいという方がいればそれはもうご自由にどうぞ。というよりお願いします。その後でいいんでメールでも下さい。では俺は今から(18:08)三宮に遊びに行きます。