4 厚化粧から遠く離れて(成年部門13→1)

13位:会長の秘蜜日記/琴吹かづき三和出版:SANWA COMICS]

会長の秘蜜日記 (SANWA COMICS No. 58)

会長の秘蜜日記 (SANWA COMICS No. 58)

 さて最初からこんな事を言ってはいかんのだろうが本作についてはあまり評価したくない。というより評価するほどの内容もない。「こちらが13位となります。10位以内には入れませんでしたが、13位ぐらいなら妥当だと思います」と言えば皆納得するはずだ。
 しかしまあそれだけというわけにもいかんので手短に言いますが、表紙を見るとひたすらヤられて雄叫びをあげるだけの人外の女の性地獄漫画かと思われるだろうが(それはそうなのだが)、一方で男(主人公)の存在感も確保されている。どのように確保されているかというとそのでかい性器によってであって、エロ漫画とは男の性器を女の性器に入れることを描いたものであるからそれ自体は何らやましいものではないが、それではストーリーも何もないからラブコメとしての過程をほんの少し追加したのが本作である。しかしながら性器によってその「ラブコメとしての過程」を表現しているのだからこれはもう大胆というか無謀で、しかし読み物としては実にギリギリであるが確かに成立している。獣の如き雄叫びをあげるヒロインのセリフを読めば性交渉によるぶつかり合いの波においてラブコメを表現していることはわかる。結局ヒロインは主人公に依存しているのであり、それをほぼ性交渉のみで進行させているのが何とも荒々しく野生的で、しかしこれはラブコメなのである。
 それにしてもチ○コがでか過ぎるとは思うがね。
 
12位:恋愛ほりっく/久水あるた富士美出版:富士美コミックス]
恋愛 ほりっく (富士美コミックス)

恋愛 ほりっく (富士美コミックス)

 ハイレベルな絵を描けとは言わない。ラブコメとして優れていればそれだけでよい。しかしこれは…線の強弱が常に一定で、しかも太いから非常に間延びした印象を抱かせる。読んでいてすぐに飽きてしまった。
 またラブコメにおいては性交渉に至るまでの過程が大事であるが、本作の全短編において過程の描写はほぼゼロで、まだ恋愛関係にない主人公とヒロインも含めて身体と身体のぶつかり合いからラブコメが始まり、しかしその肉体のぶつかり合いによって対話が生まれているのでラブコメとしてセーフではある。ヒロイン側がリードするというよりも一方的に強引に主人公を押さえ込み、同時に主人公に対する愛を表明しているのでその時点で愛の対話が成立しラブコメとなっていて、それが独特の「太い」線によって描かれ非常に拙く無骨な感じを与えながらも紙一重のところでラブコメとして成立しているのは確かである。また太い線によって描かれるヒロインたちの積極さに主人公(読者)はどこまでやっても大丈夫という奇妙な安心感さえ感じることができ、荒々しさや騒がしさがありながらも非常に母性的な構造となっている。しかしいくら母性的であっても無骨であることには変わりない。ラブコメとはヒロイン(女)が主人公(男)よりも積極的でありながら、ヒロインは決して主人公よりも大きな存在とはならず、また最終的には主人公がヒロインを支配するという思想であり、そのためには「洗練さ」が要求される。その点を本作が満たしている…とは言い難く、この順位で評価するのが妥当であろう。
 しかし表紙を見た時はかなり良さそうに見えたんだがなあ…。昔はよく表紙買いをして失敗したものだが、エロ漫画歴10年になってまた失敗するとは思わなかった。日々勉強ですなあ…。
 
11位:純愛以上レイプ未満 りとるらびっつ/ドバト[オークス:XO COMICS]
純愛以上レイプ未満~りとるらびっつ~ (XOコミックス)

純愛以上レイプ未満~りとるらびっつ~ (XOコミックス)

 「ヤンデレ」だからと言って必要以上に病んだ状態にしてはいけない。ラブコメのヒロインは一方的に主人公に言い寄るのが大半であり、それだけでも十分病んでいるので、特に「ヤンデレ」を強調する必要はない。それでも「ヤンデレ」を使う場合に大事なことは主人公の関係があって始めて「病んだ状態」にしなければならないことであって、主人公がいようがいまいがキチガイであればそれはヤンデレとは違うのである。その点、本作のヒロインはまさに主人公(お兄ちゃん)に依存しているから及第点であるが、だからと言って主人公を押し倒したり襲うようになると話は違ってくる。
 ラブコメとは男が女より優位に立つ思想であるが、それは精神的な優位のことを言っているのであって実際の行動は女(ヒロイン)側が積極的に出る方が望ましい。ヒロイン側が愛を示し、行動に出ることによって主人公(男)の行動に余裕が生まれ、制約がなくなり(ヒロインの方から告白してきたので)、結果として優位に立つのである。そしてそこさえ守ることができれば性交渉時において逆に主人公がヒロインに積極的に出ても問題はない。性交渉描写においてもヒロインが主人公を終始リードすると精神的な優位が揺らぐ可能性があり、本作のように「妹が兄をレイプする」となるとせっかく確保した優位性が消滅する可能性があろう。
 「平凡で冴えない男が容姿端麗な女をなぜか支配する」ところにラブコメの根源的な快楽があるのであって、後半において妹が兄を肉体的に拘束し、肉体面において拘束することで精神面においても支配しようとするところは明らかにラブコメのルールから逸脱してしまっている。例えそれが「お兄ちゃん好き好き大好き」から発せられたものだったとしてもそれは行き過ぎなのである。とは言え本作全体を通じての妹の兄への想いは本物であり、「想いのあまり、暴走した」という範囲でギリギリおさまって最後はハッピーエンドとなったので大事にはならなかった。かくして「日本ラブコメ大賞成年版」に認定されることになったのである。
 それにしても、こういうのを読むとオタクは基本的にマゾだと言うことがよくわかりますね。だから俺は少数派なのだ。
 
10位:ビーナスラプソディ/春城秋介[ティーアイネットMUJIN COMICS]
ビーナスラプソディ (MUJIN COMICS)

ビーナスラプソディ (MUJIN COMICS)

 絵のクオリティはもちろん高い方がいい。しかしいくら絵がうまくても(自慰に使えるものでも)ラブコメでなければただの絵と紙である。ラブコメへの情熱が大切なのだ。本作はキャラクターのクオリティ(というより顔そのもの)がやや大雑把(男も女も同じ顔立ちに見える)で、背景や空間もどことなくぎこちないが、この日本ラブコメ大賞に認定されたほどであるからそんなことはどうでもよい。
 ではラブコメとしてどうなのかと言うとヒロインと主人公の距離感をヒロイン側の積極的な行動によって縮めながら、それを少し離してまたくっつけるという動と静のテクニックをうまく使いこなしているところがミソである。それが物語に艶を出してエロ漫画のキャラクターの性的魅力を引き出している。また本作全体を通して共通しているのは随所に「女性本来の弱さ」を描写していることで、いわゆる「強く求められたら拒めない」というやつであるが、最初にヒロイン側がリードすることによって主人公が勢いに乗り、やがて形勢逆転した時のヒロインの困惑と期待が妖艶に描かれている。ヒロインが積極的に主人公を誘うことがラブコメの条件であるが、性交渉においては所詮男(主人公)が女(ヒロイン)を組み敷き、女が組み敷かれるのである(騎乗位ならいいだろうという問題ではない)。そこに女の愛らしさがあり、本作の場合序盤は女の方が強い(誘っている)分、性交渉時において女性が持つ弱さが引き立って主人公の優位性がかなり保証されている。ラブコメとはヒロインの積極性や社会的地位、あるいは性格を駆使しながら最後には主人公が優位に立つ思想であり、本作はそれをちゃんと満たしている良作なのである。しかし少しクオリティ的に大雑把なところがあるのも事実で、次作に期待することにしよう。
 それにしても…こいつらもチ○コでかいなあ。
   
9位:Virgin Hunt ばーじんはんと/さいだ一明エンジェル出版:エンジェルコミックス]
Virgin Hunt (エンジェルコミックス)

Virgin Hunt (エンジェルコミックス)

 惜しい惜しい。後ほど出てくる6位の作品にも言えることだが本作は「ハーレム」ものでありながら「ハーレム」の持つ一番おいしいところを調理できていないのである。
 もともと「ハーレム」ほど簡単なようで難しいものはない。過程も何もなくハーレムにしても(男1人・女複数で性交渉させても)唐突なだけであるから過程を用意しなければならないが、その「過程」においてはハーレムを醸成するための周到なストーリーと各キャラクターへの綿密な心理描写が必要で、各人各様の主人公への想いを吐き出させながらそれを無理なく「一夫多妻」状態であることの肯定へと導かなければならないのである。しかし本作は「ハーレム」とは違うストーリーラインがある(「六人の処女と交わって」云々)ためにとても「各人各様の主人公への想い」まで行かず、行き当たりばったりな感は否めない。そして成年漫画でハーレムにする場合は2〜4人が適正規模である。それ以上の人数とのプレイとなると男(主人公)は一人なのだから手が回らず、女同士の絡みに頼らざるを得なくなってレズ的描写が入ってしまう(実際、6人のうちの1人はレズであった)。
 本作の惜しいところは主人公が次々とヒロイン達と性的関係を持ち、ヒロイン達と主人公はもともと相思相愛であったのに「六人の処女を姦し、堕とせ」という厄介な設定によって何となく義務的な臭いが醸し出されてしまっていることである。その設定によって次々とヒロインと関係が持てるのだから仕方ないが、ラブコメの基本は「ヒロイン側の積極的な行動によって関係が始まる」ことにあり、義務的では駄目なのである。しかしハーレムの魅力である「主人公が複数のヒロイン達と性的関係を持ちながら、ヒロイン達はその状態を肯定する」ことは結末によって確保されているのでこの順位となった。結局本作はハーレムの恐ろしさを知らずただ勢いで描いたというところだろう。しかしその意気や良し、究極のラブコメとはハーレムなのである。「1人につき10秒ずつね!」。
 
8位:年刊中年チャンプ 初期作品号/中年[MAX:ポプリコミックス]
年刊 中年チャンプ 初期作品号 (ポプリコミックス79)

年刊 中年チャンプ 初期作品号 (ポプリコミックス79)

 本作の評価が難しいのはややふざけている感じがするからである。主人公やヒロインをやや癖のある人物として描いてギャグの要素を取り入れているのが本作であるが、基本的にエロとギャグは相容れない。性交渉は本質的に厳粛なものであり、破壊をベースとするギャグとは別次元のものなのである。しかし「コメディ色を強くすること」とエロを両立させることは可能であって、本作はギャグにならないギリギリまでコメディ色を強くしているだけなのでエロ漫画のボルテージは維持している。そしてラブコメ描写も忘れていない。ここの評価が難しい。
 主人公とヒロインの間には性交渉へと至る対話が必要であるが、本作ではその部分をコメディとして処理している。しかしそれがラブコメとしての表現を一層強くする方向で目指されており、そうすることで主人公とヒロインのぎこちなさが解消され、作品全体が和やかで緩い雰囲気となってラブコメ本来の甘い描写が出ている。その思い切りの良さが本作の魅力で、ほぼ「ギャグ」に近いコメディの持つ力強さとスピード感で主人公とヒロインの関係を一気に発展させ、発展した後の性交渉はもちろん、ヒロイン側の主人公に対する想いなどもそのスピード感で一気に頂点へと持っていっている。そのため読む側としては「いつの間に相思相愛になったのだ」という違和感もあるが、それは決して不快なものではない。主人公とヒロインの対話をスピーディーに成立させた分、残りを「愛の対話としての性交渉描写」に費やすことができ、性交渉の過程でヒロインがいかに主人公を想っているかを確認できるのだからこちらの方がお得なのである。
 確かにこの癖のある、細かい部分を狙い撃ちしたコメディ描写は万人受けするものではないが、俺は気に入っている。是非とも体調を回復され、復活してほしいものだ。
 
7位:らぶ・かん/憧明良茜新社:TENMA COMICS]
らぶ・かん (TENMAコミックス)

らぶ・かん (TENMAコミックス)

 繰り返すが、ラブコメにおいては女(ヒロイン)が積極的に出なければならない。そしてその「積極的」はストーリー展開上の要請を踏まえたものでなければならず、いきなり股を開けばいいのではない。またヒロインが積極的であっても男(主人公)が常に受身でいるわけにはいかない。性交渉において、どこまでも女に任せっぱなしであればいずれ破綻するからである。そもそも男と女が絡むことによって成立する成年漫画においてどちらか一方だけが主張してもうまくいくはずがないのである(どうせ男は野獣になる)。発端におけるリスクを女に背負わせることからラブコメが始まるのであり、「きっかけを女が作る」のがラブコメなのである。
 そこで本作についてであるが、ヒロイン達の積極さが軽快ながら緩急を伴って描かれて、主人公(読者)側に何ら重さを感じさせず非常に読みやすかった。また成年漫画となると性交渉以外のシーン、特にキャラクターたちの会話が杜撰なものになるが、本作の場合その会話のキャッチボールがテンポよく飽きさせない。それが本作全体を非常に明るいものにして、読後は「ヒロイン達が積極的に出た」ということに気付かないほどであり、結果として読者(=主人公)は「ヒロインを組み敷いた」という満足感を得ることになるのである。ただし惜しいことに本作はヒロインをほぼナースに限定しているのでどうしても窮屈な印象を受ける。ヤッていることはラブコメなのであるが、本来主人公とヒロインだけの関係性から発展するはずのラブコメに余計な制約が付されているためにこの順位となった。しかしいいものはいい。俺も今度、五反田の風俗でナースのコスプレを頼んでみるか(いつもはレースクイーンとかボンテージとかを頼んでいるが。わははは)
 
6位:美人な義母と強気なクラスメート/OKAWARI[茜新社:TENMA COMICS]
美人な義母と強気なクラスメート (TENMAコミックス)

美人な義母と強気なクラスメート (TENMAコミックス)

 タイトルを見ればわかるように本作は「美人な義母」と「強気なクラスメート」と主人公による長編ものである。つまり主人公は2人の女性と性的関係を持ち、2人の女性に愛されながらハーレムの世界を味わう作品なのであるが、何度も言っているようにハーレムものが難しいのは「主人公(読者)に罪悪感を抱かせない」ようにしなければならないからで、一般のラブコメならば実質的にハーレム状態であっても性交渉まではいかないから罪悪感もそれほど深刻なものではないが、本作では2人の女性と性的関係を結び快楽に翻弄される主人公にはどこか淀んだものが感じられ読者は罪悪感を意識してしまう。それはストーリー展開をコメディとして処理していないからで、両ヒロインによる修羅場も派手に行われない分緊迫したものになって、それはそれで面白いが「快楽としてのラブコメ」を求める俺には違和感があった。結果として暗くなっているのである。
 恐らくこの暗さは作者があとがきで述べているように「主人公は最後に悲惨な目に、いっそ死ぬか殺されるか」とも考えていたらからであろう。もちろん最後は主人公と両ヒロインによる現状維持(ハーレム状態)で終わるが、当初はそのような悲惨な最終回をもくろんでいたのだろうから性交渉描写も「悲惨な結末のためのもの」となってラブコメとは違う緊張感のあるものとなっている。その緊張感のために両ヒロインの主人公に対する想いは真剣で一途なものとなり、性交渉場面でもその情熱は画面におさまらないほどの乱れた動きとなって表れ迫力が増している。しかし結末はハーレムなのだから、結果的にはラブコメでありながら非常に締まるスタイリッシュな良作となった。
 それにしても惜しいのは、この義母が他の男(主人公の父親)とヤッてしまっていることだ。それによって本作の魅力は半減している。ラブコメはあくまで主人公との関係性の上に展開されなければならない。そうでなければただの自慰の道具ではないか。
 
5位:デキる妹はイヤですか?2/089タロー[キルタイムコミュニケーション二次元ドリーム文庫
デキる妹はイヤですか?2 (二次元ドリーム文庫 194)

デキる妹はイヤですか?2 (二次元ドリーム文庫 194)

 何度も言っているようにツンデレはラブコメにおいて邪道である。「平凡で冴えない男」が「絶えず周囲の注目の的になるほどの美人」に惚れられるのがラブコメの大原則なのであり、「あたしみたいな美人が、何であんたなんか好きになるのよっ」などと言われたら目も当てられない。それでも二人っきりの時は「デレ」になるのは手法としてはありえるが、ラブコメにおいては「周りに人がいる」にも関わらずヒロイン側が主人公に愛を告白することがヒロインの愛情を測る一番のバロメーターなのである。
 そのように考えると、反抗期真っ最中の義妹たちが記憶を失って幼児(小学生低学年くらい?)のようになり、あどけないながらも一途に主人公(義兄)を想い、成長した身体で主人公を篭絡するというのは素晴らしい設定ではある。「美人なヒロイン」が「平凡で冴えない主人公」に理由もなく惚れてしまうのは無理があるが、同じ屋根の下で暮らしてきた家族(しかも義理)の間ならば理由なく惚れてしまうのも自然であり、且つ幼児特有の無邪気な好意であれば誰も口出しできないから主人公(=読者)は存分に快楽へダイブできよう。そして中盤に差しかかる前からひたすら義妹ヒロイン2人は「お兄ちゃんのお嫁さんになるには、子供ができないといけないから、いっぱい子供作ろう」となって主人公を押し倒すのであるが、その愛情も幼児の素直さによって常に主人公に降りかかり、非常においしいものになっている。
 そして中盤以降の主人公はまさに快楽の虜となるが、ヒロイン達はそれでも純粋に「お兄ちゃんのお嫁さんになりたい、子供を授かりたい」と願って性交渉に臨み、やがて主人公以上に快楽の虜になって主人公への愛情のみならず献身や忠誠心まで身につけていくのである。言わば調教までされるのであって、にもかかわらず両ヒロインは幸せを維持し、記憶が戻ったとしてもやはり主人公の「妻で、妊婦で、義妹で」となるのである。まさにハーレムラブコメと言えよう。これで最初のツンなシーンがなければ1位になっていたかもしれないが、結果的には導入部で両ヒロインのツンな描写を入れることで中盤以降のひたすら甘い性交渉の場面が映えることになったのも事実だ。これでいいのだ。
 
 今や子宮唇もぱっくり開いて奥から愛液をドバドバ垂らす。実玖のヒダヒダは狭さを増して舌をペロペロ舐め返すし、吸い込むような動きでもってラビアでディープキスしてくれる。芽衣菜の中はもうゼリーよりも柔らかくて、細かいツブツブが隙間なく吸い付きひたすら熱く男根を悦ばせてくれた。
 違いはあれど、どちらにも深い深い愛情がある。彼だけを愛し、彼だけを受け入れ、彼だけの子を身籠るという女としての最高の求愛が。
 
4位:Only You/青木幹治コアマガジン:ホットミルクコミックスシリーズ]
Only You (ホットミルクコミックス)

Only You (ホットミルクコミックス)

 何度も言うが、ラブコメにおいてはヒロイン側が積極的に主人公をリードしなければならないが、淫乱(「男なら誰でもいい」「挿入してくれるなら誰でもいい」)にしてはならない。成年版ラブコメにおいてはヒロインのその積極的な性交渉への助走は「相手が主人公(=読者)だから」ということが必要なのである。そしてその「主人公が相手だから」ということをしっかりと確保した上で、次に「成年漫画としての表現」に移るのである。最近は和姦傾向のエロ漫画が増えてきたとは言え、ほとんどが「ヒロインを淫乱にして、しかしそれでは純情でピュアな読者が納得しないのでとりあえず主人公と相思相愛にしておいた」というものばかりであり、それではラブコメにならない。しかし本作は違う。
 以前に作者の別の作品(2009年度成年・11位)で評したように、各短編で特徴的なのはヒロインが主人公に対して想いを持っていることを認識して悩むことである。それはヒロインが主人公との関係を第一に考えていることを意味する。また「積極的に主人公をリードする」場合でも、それはどうすれば主人公に愛されるかに端を発している行為であるから主人公側より決して前に出ない節度を伴って描かれている。「節子さんシリーズ」を読めばわかる通り、ヒロインは主人公にベタ惚れであるが決してそれを前に出さず、それでもその「前に出さない」ことを主人公(=読者)はわかっているのであり、それによって主人公側の優位が確保され、且つ棚ボタ的に幸せな夫婦生活を送る(子供も授かる)のである。これはなかなか味があってよいではないか。
 ラブコメにおいては興奮できるかどうか(自慰に使えるかどうか)は関係なく、性交渉描写が淡白でもよい。「性交渉について女性側が積極的にリードする」構図そのものが重要なのであり、その過程がラブコメの評価になるのである。
 
3位:恋糸記念日/たかやKi[コアマガジンメガストアコミックス]
恋糸記念日 (メガストアコミックス)

恋糸記念日 (メガストアコミックス)

 まず絵柄が非常に可愛らしく愛くるしく、そのくせヒロイン達の身体はエロ漫画の水準を保っていて、そのようなヒロイン達に愛を告白されるのが本作品の基本的なパターンである。特に感極まって泣きながら告白するところなどはラブコメとしては非常にポイントが高い。告白するという積極性と、好きすぎて自分でも感情を抑えれらないという困惑を表明することで主人公側は特に気張ることなくヒロインに積極的に接することができるからである。何も最初から最後までヒロインが積極的で主人公が受身でなければならないというのではない(それではただのサドとマゾだ)。何度も言っているが、性交渉の「きっかけ」をヒロイン側が誘発するところがラブコメの最大の魅力であり、その役割を可愛らしく愛くるしいヒロインが実行することによって主人公側も大いに動くことができ、それを読者が違和感なく自然に読むことができれば万々歳なのである。また最後にはちゃんと肉体的にも精神的にも結ばれたことによるヒロインの幸せを描写していて、何とも甘く幸せな気分に浸ることができた。しかしそのような「可愛らしく愛くるしいヒロイン」を描くことにのみ集中してしまって、主人公(男)が「平凡で冴えない男」であることを表明する機会を逸してしまっているのが残念でもある。またハーレム描写(男1人に女2人)があまりないことも大変残念だ。このようなヒロインを同時多発的に投入すれば本作は文句なしの1位となっていただろうに。
 しかし「アパートの管理人で若い女」というのは何であんなに魅力的なんでしょうかねえ…。
 
2位:脱・妹宣言/EBA[マックス:ポプリコミックス] 
脱☆妹宣言 (ポプリコミックス 95)

脱☆妹宣言 (ポプリコミックス 95)

 繰り返し言っているように、ただ自慰の道具として機能すればいいのではない。求めるものはあくまでラブコメであり、性交渉までの過程と、性交渉本番におけるぶつかり合いの中でいかにラブコメ描写を表現できるかにかかっている(そもそも本作のような、ロリ体型のくせに不自然に巨乳なヒロインに興奮できるわけがない)。そのような「男女の愛の対話としての性交渉」において、濃密な主人公とヒロインの関係性をそのまま性交渉シーンに反映できている本作は優秀である。また各短編において「膣内射精」、つまり妊娠をイメージさせるところまで踏み込んでいるところなどまさに「和姦」「愛の対話」としてのラブコメの一つの頂点であり、シンプルにそれだけを描くことでラブコメの完成度も高くなっている。
 本作の特徴は、ヒロインが主人公に抱かれ恋愛を成就したことで簡単に幸せに達してしまうことである。しかし決してお気楽に描かれているわけではない(表題作など実の兄妹ものである)。平凡で冴えない男(=主人公=読者)が性交渉を謳歌し愛を謳歌し、この世の春を手に入れ、それでも違和感を感じないのはヒロインがそれ以上の幸せの絶頂にあることが読者にわかっているからである。そのシンプルさを一途に描くことこそラブコメの到達点である。ラブコメとは多くの読者の代わりに主人公とヒロインを幸せにすることで、自分自身も幸せにさせるものなのである。
 それにしてもカバー裏の「脱・妹宣言書」はいいなあ。
 
1位:First Love/尾鈴明臣茜新社:TENMA COMICS] 
First Love (TENMAコミックス)

First Love (TENMAコミックス)

 まずテクニック的なことになるが、ヒロインたちの肉感的な身体と、それにもかかわらずスタイリッシュで芯の強そうな清らかさを醸し出している身体の表現力は俺の見渡すエロ漫画の世界においてトップレベルであった。また作品全体が主人公とヒロインの2人だけの世界に特化していて、2人の関係性を丁寧に、しつこいぐらいわかりやすく描いていながら少しも不自然さが感じられない。こうなっては2人の間には誰も近寄れず、そこにトップレベルの画力を投入するわけだから非常にそそるものになる(特にカラーがものすごくそそる)。
 トップレベルの画力で描かれたヒロインたちが主人公との2人だけの世界を作るのである。それはラブコメにおける本質的な魅力、つまり「平凡で何の取り柄もない男(主人公)に、容姿端麗な女(ヒロイン)が積極的に絡む」という魅力を暴力的なまでに昇華させている。その暴力的な魅力が和姦という非常に穏やかな空気の中に取り込まれることで初々しさと愛らしさも見事に表現できている。本作はエロ漫画という暴力的なものをラブコメとしてうまく抽出できているのである。また2人だけの世界であることの甘さと、容姿端麗なヒロインの魅力によって微妙に淫靡さも加えることに成功している。ただし主人公とヒロインの関係性に重点を置くあまり、それ以外の人物や背景による盛り上がりはほとんど皆無であるが、そんなものは大した問題ではない。ラブコメの魅力を暴力的なまでに磨き上げた本作は文句なしの1位である。

3 敗者だけが笑う(10→1)

10位:彼と彼女の(オタク)2/村山渉[幻冬舎幻冬舎コミックス

彼と彼女の(オタク)2 (1) (バーズコミックス)

彼と彼女の(オタク)2 (1) (バーズコミックス)

 現在の日本社会における「平凡で冴えない青年」は多かれ少なかれオタクであるから、「平凡で冴えない青年」を描くのに「オタクであること」を避ける方がもはや不自然である。しかしいまだに主人公をオタクとはっきり描写するのは(一昔前よりだいぶ増えたとは言え、全体的には)少数である。これだけオタク文化が大量に溢れていてもやはり現在の日本社会において「オタク」は毀誉褒貶の対象になっているからで、作者側はもちろん、読者側もどういうスタンスで「オタク」に接すればいいかわかっていないのである。
 しかしながら「オタク」が日常から超越した(故に排撃と嫌悪の対象となった)存在であるなど90年代後半までの話で、00年代以降に物心ついた若者たちは既に「オタク」を「その他多くの『趣味』の一つ」として消化している。それを踏まえればオタクを舞台にした物語に何ら恐れを抱く必要はない。そうすることで「オタク=勉強もスポーツもできない冴えない男」が主人公となる物語が広がり、ラブコメも増えよう。いい事だらけではないか。
 さてそこで本作であるが、まずオタクというやや癖のある(というより必要以上に周囲に対して脅えている)キャラクターを否定も肯定もせずに淡々と描写しているところを評価したい。いまだに極端にデフォルメ化されたオタク描写が蔓延する日本漫画界にあって頼もしい限りである。ただしパワー不足でもあって、作者が女だから仕方ないのだろうが、この国でオタクであることによって背負わされる「負のパワー」を乗り越えるために必要な更なる「パワー」(負でも正でも構わない)が根本的に足りない。もっとも、だからこそ本作は優しい雰囲気に包まれていることも事実である。気になる異性に声をかけることもできず、向こうから話しかけてきてもほとんど言葉が出ない主人公に優しい偶然を与えることによってきっかけを作り、何とか発展しそうだという余韻を残して終わるパターンは何度読んでも優しい気持ちになる。また各ヒロインはオタクで臆病でとても女とまともに話せない主人公になぜか悪い印象を持っていない(実は彼女らも多かれ少なかれオタクなのだが、同族嫌悪的なものは一切ない)ことからもわかるように、生暖かいぐらい生暖かい目で見守らないと「オタクの恋」は成立しないことを作者はちゃんと把握しているのであり、それによって本作は立派なラブコメとなっている。
 しかしつくづく思うのは2011年においてやや暗めの青春を書こうと思えばもう「オタク」というのは避けて通れないということであって、本作はそれに対する嚆矢となり得るほどの優れた作品である。
 
9位:LOVE LOOP/かたせなの[少年画報社:YCコミックス]
LOVE LOOP (ヤングコミックコミックス)

LOVE LOOP (ヤングコミックコミックス)

 ラブコメとは「平凡で冴えない男になぜか美人な女が言い寄ってくる」ことで読む者に「癒し」を与えるものであるから、消極的な男に対して女が積極的にならなければならない。つまり女の側が誘惑するわけだが、誘惑すると言ってもただ股を広げればいいわけではない。読者に「癒し」を与えるための誘惑でなければならず、そのためには「リスク」と「優越」の問題を解決しなければならない。
 「リスク」とは他人である男女が恋愛関係の仲に発展する時に背負うべき義務の程度であって、恋愛が自分以外の他人との関係である以上そこには乗り越えなければんまらない様々な壁があり、その結果思うように行かないことが多い。また昨今は「女尊男碑が当然」であるから、男にとっては尚更思うように行かない。この「思うように行かない」ことが「リスク」であり、ラブコメの場合このリスクをゼロにするためにヒロイン側を積極的にさせるのである。積極的なヒロインが主人公に愛を告白することで関係が始まるわけであるから「壁」に対する負い目はヒロイン側が引き受けるのであり、主人公は負い目がない、つまりよほどのことがない限り思うままに行動できることになり「リスク」から解放されるのである。だからと言って傲慢に傍若無人に行動するわけではないが、ポーズとしては「ヒロインが告白してきたら仕方なく付き合って…」という逃げ道が用意されることになる。そのようにして主人公(男)側はヒロインが起こした行動に乗りつつもリスクは取らなくてよいのである。これが主人公(=読者)に余裕を与え、その余裕は「優越」となって、ヒロイン側が積極的に性交渉等において立ち回ることによってますます強固なものになっていき、読者は癒されるという寸法である。
 特に本作の場合少女漫画のような細い線によって描かれたヒロインたちが積極的に動き回り、主人公は流されるままに性交渉等に応じればよく、ヒロインはそれでも主人公に抱かれて幸せな雰囲気を全身に醸し出しながらストーリーが展開されていくのである。至れり尽くせりとはまさにこの事で、甘くておいしいお菓子が用意され、おいしい飲み物も用意され、更に高価なマッサージチェアがあって…という風に何重もの癒しの要素が用意され素晴らしいの一言に尽きよう。こういう本に出会った時が一番、「ラブコメを追い求めてきてよかったなあ」と思う時である。
 
8位:はかない!/えむあ[少年画報社:YCコミックス]
はかない! 1 (ヤングコミックコミックス)

はかない! 1 (ヤングコミックコミックス)

 ラブコメの永遠のテーマが「空から女が降ってくる」であることは論を待たない。まさに棚ボタ的展開の最たるものであり、そのような都合の良い設定をぶつけながらいかに物語として、或いは商品として陳腐なものにならないようにするかが作者の腕の見せ所であり俺の評価のしどころなのである。
 通常そのような「都合の良い展開」には違和感がつきまとうが、では違和感を消さなければならないかと言うとそうではない。ここに誤解がある。ラブコメに限らずあらゆるフィクションに違和感は付いてまわるのであり、本作のようにその違和感を維持することによって不快さが取り除かれている、という風にするのが実は一番ハズレがないのである。つまり本作は違和感を維持することによって「都合の良い展開」から通常生じる読者の不快さを打ち消すことに成功しているのである。
 本作では第一波の「違和感」によって第二波の「都合の良い展開」そのものの印象を打ち消すため、ヒロインを魅力的に描くことに最大限の努力が費やされてる(これは1位の作品にも言えることだが)。そのため本作のヒロイン(ノーパンかつパイパン)は「空から女が降ってくる」ことを極端なまでに徹底していて、更には全く正体不明ながら主人公にまとわりつき、それによって性交渉描写があろうがなかろうがヒロインの純粋性が強調され魅力的に映ることになっている。ラブコメという特異な形態でしか成立しない「魅力的なヒロイン」を、作者が(或いはこの作品が)意識している(もしくは無意識に把握している)からこそできる高度な技が目の前で展開され、更に畳み掛けるようにヒロインが主人公に愛を告白し実際の性交渉においても常に愛の存在を忘れないことで読者は「空から降ってくる」も「違和感」も「都合の良い展開」もどうでもよくなるほど引き込まれてしまうことになるのである。
 ラブコメという特異な形態でのみ成立するキャラクターを活かすことによってこの作品は秀でている。またそこに「売れない小説家(ゴーストライターで稼いでいる)」という癖のある主人公を持ってきたことでスタイリッシュさと泥臭さを同居させているのも本作の魅力に相乗効果を生み出している。何度も読むと確かに「都合の良い展開」への強引な手法の粗も目立つが、それは些細な問題でしかない。本作は非常に高度なラブコメなのである。これで輪姦・ヤリマンなアレがなければ(読んだらわかります)1位だったのだがなあ。うまいこといかんが、「カリモノ競争」(注意深く読めばわかります)はツボにはまるくらい面白かったので良しとしよう。
 
7位:ノエルの気持ち/山花典之[集英社ヤングジャンプ・コミックスBJ]
ノエルの気持ち 1 (ヤングジャンプコミックス)

ノエルの気持ち 1 (ヤングジャンプコミックス)

 本作をわかりやすく言えば、トレンディドラマをラブコメ風にしたものである。トレンディドラマの主人公をイケメンではなく普通の平凡な男に、正義漢でも悪党でもない普通の男にすれば立派なラブコメになるという見本のようなものが本作である。またトレンディドラマでは主人公が社会人であるのが普通でありそれが社会人である俺には好印象で順位にも影響したが(もはや高校生や大学生に感情移入するには多大な労力を要する)、逆に高校生や大学生が本作を読むといまいち楽しめないかもしれない。社会人の主人公の立ち振舞いもしっかりしていて崩れないのでヒロインの他に主人公に想いを寄せる女がいても「複数の女と関係を持って揺れる」という状態に発展しそうにないのが物足りなくもあるが、後述するヒロインとの関係を考えればこの人物設定はベターであった。もちろんラブコメとは日常における恋愛的な騒動と戸惑いを楽しむものであり主人公は程度の差はあれど慌てふためいて戸惑わなければならないが、本作では主人公以外の周囲の人物たちをコメディ的に処理することで主人公を巻き込んで適当にデフォルメもされているので窮屈な感じはしなかった。
 とはいえ何と言っても本作は「義理の妹」であるヒロインが持つ安心感と破壊力を存分に発揮していることに特色がある。「義理の家族」という微妙で危ない関係にヒビが入ることで波紋が生まれ、「義理の妹=心を許した家族」という安心感によってその波紋は心地よいときめきとなり、そのあたりを洗練しながらもいつ壊れてもおかしくないような儚さが描かれている。ヒロインである義妹は高校生ながら世界レベルの優秀なスケート選手であり(トリプルアクセルもできる)スケート界のトップを目指すが一方でラブコメのセオリー通り「お兄ちゃん大好き」な妹でもあり(「兄にたくさん褒めてほしくて私…スケートを続けて来たんです」)、その兄に対する一途な気持ちとすれ違い(兄は妹が義理であることを知っているが、妹は義理の関係にあることを知らない)を抱えながら銀盤上で美しく踊る姿はまさに洗練さと脆さを表している。
 「お兄ちゃん大好き」な美しいヒロイン(妹)にとって憧れの対象である主人公(兄)はヒロインの行動原理なのであり、それゆえこの主人公(兄)はストーリーの鍵を握る。これこそまさにオーソドックスな王道ラブコメの構図であって、「イケメンではない普通の主人公(兄)」をヒロイン(妹)は盲目的に愛し、それによって主人公は、本来なら(普通のトレンディドラマなら)話を引っ張るはずのヒロインの行動を左右するという点で上位の存在となるのである。それでも主人公はあくまで「平凡」な存在を維持してヒーローにはならない。それがラブコメの面白さなのである。
 本作のような漫画こそドラマ化するべきなのだ。まあそうなったら主人公にイケメンを起用してストーリーも大幅に変えられるだろうから…やはりアニメ化が一番無難だろう。アニメにならんかなあ。「夢で逢えたら」(2000年18位)みたいに。
 
6位:いらっしゃい青春/はしもとてつじ[久保書店:ワールドコミックス]
[rakuten:surugaya-a-too:10808590:detail]
 さて本作は去年4位となった「あした天気になァれ」と同じ作者による昭和の漫画である(昭和55年発行)。「携帯電話もインターネットもない」などという次元ではない。まだ「オタク」も「萌え」もない時代の「青春ロマン」を謳った作品集であり、しかし立派なラブコメである。平成23年現在のように女どもが肌の露出の多い服装で平気で闊歩できるような生き方をしていない時代の若者たちの青春はウブで純情で、A(キス)だけで大騒ぎするぐらいであるからC(セックス)をするなど遠い国の出来事のように現実感がない。実際に旅館や個室喫茶に入っても初々しいカップル達は「ごめんね。やっぱりCは…こわいわ」と言って初々しいまま終わるわけであり、それはセックスというものが「自分達のような未熟な者がやってはいけない、ちゃんと責任が取れる自立した大人でなければやってはいけない」ものだということが社会通念として存在し彼らがそれをしっかりと認識していたことを意味している。そしてそれ故に彼らは自分達が大人の階段を登ろうとしていることに気付くのである。まさに青春のロマンではないか。
 とにかくこの一冊にはウブで純情な若者達の優しさ・甘酸っぱさ・若さが溢れていて、何度読んでも微笑を禁じ得ない。またラブコメは「平凡でおとなしい男に美人の女が寄ってくる」ことを基本としているが、本作のヒロインたちは美人とは言及されておらず、それでも問題ないのである。なぜなら昭和55年当時は現在のように過剰に「美人」を求められる時代ではなかったからであり、美人でなくてもお見合いや職場での出会いで何となく結婚してそれなりに幸せに暮らすことが可能だったからである。今や女が男と同じように働くことを当然とする風潮の中で「何となく結婚する」ことは認められなくなり、男たちはセックスの相手としての「女」かどうかを厳しく見極めることになった。そのため「美人かどうか(=セックスの相手として魅力的かどうか)」がラブコメの基準の一つとなってしまったのである。だが本作はそうではない。「ほとんどの人が落ち着くところに落ち着く(結婚する)」のだから、平凡な男(主人公)にもガールフレンドはいて当然なのであり、そのガールフレンドは「美人でスタイルがよくて…」でなくてもよいのである。今は幻想となった「一億総中流」の中で、「平凡だが穏やかに幸せに暮らす」ことが当然できるという前提で物語は進められ、C(セックス)に臆病となって断念しても「気にするなよ。あんなのいつだって出来るさ。だってこれからもずっと一緒だろ」「うん」と言う主人公とカップルは実にいい顔をしている。まさに青春の1ページである。
 それにしても…やはり昔はいい時代だったなあというのが俺の結論である。女たちは色気を振りまく必要がなかったし、それに反発する必要もなかった。総合職として男と張り合うこともなかった。男から見た、セックスの相手としての「女」の存在感を主張する必要もなかった。セックスとはもっと日常で滲み出るものだったのだ。それがこの作品を読むと痛いほどわかる。いつからこんな時代になってしまったのだろうか。
 
5位:つぼみな奥さんポン貴花田双葉社:ACTION COMICS]
つぼみな奥さん (アクションコミックス)

つぼみな奥さん (アクションコミックス)

 何度も言うようにラブコメとは「平凡で冴えない男と美人な女」の物語であるから、別に夫婦でもいいわけである。むしろ「夫は平凡で冴えないのに妻はかなりの美人」とした方がインパクトが強い場合もある。11位で言ったように夫婦には「何をやっても許される」という安心感がある、社会的に認められた形態であるから、何物にも干渉されない強固さに守られている。どんなにアクロバティックな体位に挑戦しても変態的世界を築き上げてもいいのである。
 ただし安心や強固である故に揺らぎがないという弱点もある。結婚しているために主人公(夫)は複数のヒロインの間を漂うことはできないからで、もちろん結婚していても女が寄ってくることは展開としてはありえるが、それは「不倫」という非常にリスクの高いものであってラブコメによる「健全」な「ワクワクドキドキ」とは違うものでありあまりいいものではない。不倫には不倫の快楽があるが、ラブコメというのは都合の良い展開を駆使して読者を癒すものであってスリルを味わうものではないのである。
 その点、本作は複数の女に言い寄られフラフラするという展開をきっぱりと拒否して主人公とヒロインだけで話は展開される。それは繰り返すが「複数のヒロインの間を漂う」ことを基本とするラブコメとしてはマイナスであるが、その弱点を「妻に先立たれた子持ちの男」に「積極的に近づく若い女」という対比で補っているどころか、そのようなコブ付きの男に女が降りかかるという構図でより深い「ワクワクドキドキ」を読者に与えているところが新鮮であった。本作は双葉社ブランドであるから各話の半分以上は主人公とヒロインの性交渉シーンで埋められているが、その性交渉は夫婦(或いは間近に夫婦となる)によるものと読者側はわかっているから生活臭やマンネリ感が出るはずが、子持ちの男にためらいなく若い女をぶつけてエロさを表現しながら夫婦であることの安心感もまたためらいなくぶつけることで性交渉による充足感をより深いものとして描写している。また随所で前妻の子供とヒロインの交流を描いて母性愛にも焦点を当て、且つ「弟や妹を作ろう」という現実的な生活臭がその母性愛と相乗効果となって性交渉シーンを見るときにどうしても感じる罪悪感を意識させないことに成功しているのである。簡単に描かれたようでなかなか作り込まれた作品となっている。
 また最後のシーンを見ればわかるように、より大きな視点として「家族」が描かれている。恋愛や性交渉は快楽を貪るためのものであるが一方で子供を産み家族を作るという厳粛なものでもあり、愛し合う夫婦の肉体的な快楽と家族の幸せは別次元ではなく深いところでつながっているということがよくわかる。本作は、エロいのに胸が熱くなる名作である。
 
4位:キャサリン/ATLUS・川上亮富士見書房:ドラゴンブック]・キャサリン 公式ビジュアル&シナリオコレクション ヴィーナスモード[アスキー・メディアワークス
キャサリン (富士見ドラゴン・ブック)

キャサリン (富士見ドラゴン・ブック)

 日本ラブコメ大賞は基本的に書籍に与えられるものであるが、ゲームや映画でもそれが優れたラブコメならば評価する。便宜上、ノベライズ・ビジュアル資料集をチャートインさせたが、今から論じるのはゲーム「キャサリン」のストーリーについてである。
 32歳の、恋人はいるがどこか冴えない男が主人公、ということで既に平均点は満たしている。問題はそこからどうプラスアルファとなるかだが、32歳の本命恋人と22歳の浮気恋人(どちらも名前は「キャサリン」)の間で右往左往する主人公の姿が素晴らしく、また本命の方も浮気の方も主人公には勿体ないほど魅力的でありながら主人公に依存している姿をはっきりと描いていることがラブコメの主人公としての立ち位置を強固にさせ、更に罪悪感というスパイスまで効かせている。またストーリーの段取りがいい。(1)浮気恋人と関係を結ぶ→(2)本命恋人の妊娠発覚→(3)両ヒロインの間で悩む主人公→(4)修羅場、という丁寧さで主人公の逃げ場をなくし、「冴えない男が両ヒロインを天秤にかけた」ことが強調され、その冴えない男が冴えないまま、スローに、しかし着実に危機に対処していく描写も好感が持てよう。
 しかもどんな危機に対処するかというと「夢に見る世界で、パズルを攻略する」のであるから、かなりの平凡性が確保されている。「夢」が舞台なのだから、一握りのヒーローに用意されたわけではない、万人がその舞台の主役になることができるものであり、それによって読者(プレイヤー)は一気に感情移入できよう。ゲームだとすぐ「ファンタジーとモンスターの世界」になるが、それではいくらラブコメ的描写があっても絵空事である。「平凡な男」が主人公なのだから、当然その舞台や事件は「平凡な男」でも容易に関わることができるありふれたものでなければならないのであり、その「平凡で冴えない男」がトライとエラーを重ね、少ない勇気を振り絞って徐々に理不尽な世界に立ち向かっていきながら、両ヒロインに対しては最後まで弱気、且つ消極的なところがラブコメをわかっていると言える。ゲームとなるとすぐに主人公をヒーローに仕立て上げてしまって歯の浮くような言葉を吐き出させるが(「僕が君を守ってみせる」云々)、本作はあくまで主人公を「冴えない」ことで一貫しているので安心して作品世界に浸ることができた。
 なおノベライズ版で主人公は浮気キャサリンとのハッピーエンドを棚ボタ的に手に入れるが、ゲームの場合は当然ながら両ヒロイン用にハッピーエンドは用意されており、そのエンディングはエロゲーのような単純なエンディングながら上質のクオリティで素晴らしかった。去年の「アマガミ」や本作のようなものがまだまだあるのならば、俺も大いにゲームに手を出すことにしよう。
 
3位:幼なじみガール/usi[芳文社芳文社コミックス]
幼なじみガール (芳文社コミックス)

幼なじみガール (芳文社コミックス)

 何度も言っていることだがラブコメは刺激的であればいいわけではない。「癒し」が必要なのである。とは言えラブコメとは「平凡でおとなしいどこにでもいる男が、なぜか美人でスタイルのいい女と付き合う」物語であり、それだけで十分「癒し」になるのでそれ以上のことは特に求めない。しかし本作はその「癒し」の他に「ハートフル」という言葉がぴったりの優しさも追加されている。恋愛関係に付き物の葛藤や苦悩を優しく包み込むことで読者は更に癒される。それもハートフルさを帯びたラブコメ的手法で包んでいる。
 本作のそのものズバリなタイトルである「幼なじみ」という特殊な(うらやましい)関係はまさにラブコメ的であるが、その「幼なじみヒロイン」が長い年月の間ずっと一途に主人公を想っていたということを丁寧に、しつこいくらい描いているのが本作の最大の特徴である。それによって主人公(読者)は優位性を確保し癒されるのである。
 しかし「幼なじみ」は特殊であるが故に感情移入しにくいという弱点もある。「近親相姦」ならば「誰にでも母や姉や妹がいる」→「家族愛が異性としての愛に変わる」ということですんなりと感情移入できるが(できんか)、「幼なじみ」はあくまで他人であり、まだ色恋沙汰とは無縁だった幼児期に仲が良かったに過ぎない。年頃になっても子供の頃のまま「幼なじみ」の関係を続けるというのはどう考えても非現実的である(まだ「美人の女が平凡な男に一目惚れする」の方が現実的である)が、本作は「ハートフルさ」を醸し出すことで「幼なじみ」という関係性をぼかしており、それによって「幼なじみ」の持つ純粋なイメージ(「子供の頃からずっと好きだった」)だけを抽出することができ、上質なラブコメに仕上がっているのである。また「幼なじみ」だとその関係の気安さから主人公をヒーローにしてしまうことも多々あるが(そんな作品を嫌というほど見てきた)、本作はそのあたりも注意深く避けて主人公を「平凡」の枠内に置くことを維持し、しかし「幼なじみ」の立場を活かしてヒロインの主人公に対する愛情を大きいものにして且つそれを違和感なく仕立て上げているのである。「幼なじみ」という設定を使いこなしながら、その設定に安住することなく男女間の恋愛描写を真剣に構成しようとしているところが素晴らしい。ラブコメは特に設定が大事なジャンルであるが、それに安易に寄りかからず真剣に描くことによって新たな世界が開けることを教わった。
 それにしてもキャラクターの顔がなあ…。斜線を入れずに眉毛で感情を表現しているから平べったいし、おでこがでか過ぎではないか。
 
2位:彼女で満室/真鍋譲治竹書房:BAMBOO COMICS]
彼女で満室 1 (芳文社コミックス)

彼女で満室 1 (芳文社コミックス)

 離婚調停中の主人公が、不動産屋の手違いで同居することになった若い女を手始めに上司の女や離婚調停中の妻やその他の「彼女」たちに翻弄されながらもヤりまくるというのが本作であり、とにかくあらゆる点で安定感がある。まず「平凡で何の変哲もない、どこにでもいるような男で、何となく駄目っぽい」主人公を完璧に描いて、しかしその主人公が弱くないことを読者に意識させる安定感がある。この場合の「弱くない」とは凡百の漫画によくある「女たちに馬鹿にされながらも『トホホ…』ですますだけ」をはっきりと拒否できる強さを持っているということであり、レズやホモを想像させるような展開をはっきりと拒否できていることである(ただし風邪をひいた時には座薬を入れられる。関係ないか)。また「(そんな主人公に)まとわりつくヒロインたち」の、強引でありながら大事なところは一歩引いたところのある、決して主人公を邪険に扱うことはないと読者に自然に理解させる雰囲気の安定感もある。ラブコメとは最終的に主人公(男)が優位に立つべきものであることをわかっているのである。それらを自然に総合して、いつの間にかハーレム状態に落ち着かせるという安定感もある。何から何までしっかりとしている。
 また「リン×ママ」(2009年3位)でもそうであったが、本作でも各ヒロイン達は確固たる理由も示されないまま主人公に身体を許し、身体を重ねることを続けることによっていつの間にか主人公に愛を示すのであり(「既成事実の積み上げが大事よね」)、主人公側は何もせずともヒロイン達の愛を獲得できるところに特色がある。主人公には何一つ精神的な重みを与えずに関係は構築され、そのため罪悪感を感じずにすむので「ハーレム」の気分を味わうのも容易となる。もちろんハーレム感をより強調するために各ヒロインと主人公との関係を丹念に描くことも忘れておらず、それによって「自立した大人の女性」であるヒロイン達が「平凡で冴えない主人公」のハーレムに入り、その状態を肯定していることになってハーレムの魅力が倍増している。「リン×ママ」だとやたらと人数が多かったが本作は基本的には前述の3人と主人公によって展開されるのであり、よりしっとりとハーレムラブコメとしてのストーリーになっている。熟練技とはこういうことを言うのだろう。
 それ以外にも手を抜くところは手を抜いてデフォルメ化して肩の力を抜いて読めばいいところも確保し、そのメリハリによって性交渉描写の盛り上がりがまさに見せ場としての魅力を放っている。緩急自在であり、素晴らしかった。本作を1位にするか否か最後まで迷ったが、ギリギリの判断で2位とさせてもらった。しかし1位となっても何らおかしくない素晴らしい作品であった。かなりベテランの作家だが、もっともっと頑張ってもらいたいものだ。
 それにしても、この主人公に未練タラタラな妻はいい感じだなあ。「別れたが、主人公に未練タラタラ」というタイプのヒロインは今までの我がラブコメ生活にほとんど出てこなかったが、いいですねえ。
 
1位:彼女はソレを我慢できない/イワシタシゲユキ[Bbmfマガジン:GAコミックス]
彼女はソレを我慢できない (GAコミックス)

彼女はソレを我慢できない (GAコミックス)

 何度も繰り返すが、ラブコメとは平凡でおとなしい男を主人公に据えて、誰もが息を飲む美人と絡ませなければならない。そしてヒロインの方が主人公にベタ惚れの状態にしなければならない。しかしながら主人公は「平凡」であることが絶対であり、ヒーローにしてはならない。そのためヒロインが主人公に惚れる理由は都合のいいものになるが、もちろんその「都合のいい惚れる理由」は読者にとっても納得のいくものでなければならない。
 そこで本作であるが、ぬいぐるみを全身に被って学校生活を続けているという半ひきこもりの高校生主人公の前に突如としてやってきたヒロインは「ひと嗅ぎ惚れした」「君の匂いに恋をした」と言うのであり、あまりの都合の良さに主人公は納得せず困惑するのであるが、ここに本作のポイントがある。主人公(=読者)は都合のいい惚れる理由に「納得せず、困惑する」のであり、それでも積極的に近づいてくるヒロインの強力さにやがて心を奪われていくのである。主人公の困惑や悩みなどお構い無しに次々と攻めてくるヒロインの強力さは「都合のいい展開」の非現実さを忘れさせる効果を持っていて、ヒロインの愛情に包まれることをやがて自然に受け入れることができるのである。
 またラブコメにおいては「ヒロインが主人公に対して積極的に対応しながら、決して主人公より存在感を発揮させない」ことも必要となる。と言っても主人公は平凡で、対するヒロインは誰もが息を飲む美人なのだからストーリーを積極的にかき回す役割はヒロインが担うことになって主人公より存在感が発揮することになるが、何度も言うようにそれは表面的なものでしかなく問題は精神的な関係であって、表面的に存在感を発揮しているヒロインの行動原理が主人公の関心をひくところにあり、また強烈なアプローチを繰り返すに従ってヒロインの行動のゴールにある主人公の存在が大きくなっていくことで主人公の存在感はヒロインを通してヒロインより大きくなっていくのである。もちろん多かれ少なかれラブコメはそのような構造であるが、本作の場合そのヒロインの強烈な存在感と迫力が抜きん出ていて(「私と主人公君が、会えない状況に陥ったら、その時は私、何するかわからないから」)、その迫力が「半ひきこもりの主人公」にも伝播してかなりの存在感になっているのである。
 また忘れてはいけないラブコメの条件が「ハーレム」であるが、本作はそれについてもヒロインの強引さを使ってもう一人のヒロインをうまく引き込んでいる。しかもそれが主人公と正ヒロインの関係を深めるための囮でしかなく、結果として主人公は2人の女性から好まれているという快楽を味わった上で正ヒロインによる快楽の提供を自然に受け入れるよう施されている。至れり尽くせりとはまさにこの事で、とにかくヒロインの魅力だけでここまでストーリーが引っ張られる作品は今までになかった。そして読後はなぜか爽快である。「爽快」とはほど遠いストーリーなのに爽快なのは、その強烈な都合の良い展開のまま最後までブレることなく描き上げられたからであろう。主人公(=読者)はハッピーエンドを手に入れてしまったのだ。あまりの急展開と幸福に何も考えられない、真っ白になった気持ちよさがある。これこそがラブコメによる快楽であり、今年度1位の作品なのである。
 
 残る成年部門編は12月28日か29日に更新します。何がメリークリスマスだ、こっちは今から今年買ったエロ漫画を全部読み直しだ。

2 密かに奪え(18→11)

18位:かみせん。/百瀬武昭富士見書房:ドラゴンコミックスエイジ]

かみせん。 2 (ドラゴンコミックスエイジ も 1-1-2)

かみせん。 2 (ドラゴンコミックスエイジ も 1-1-2)

 本作のような「空から女が降ってくる」系の作品は「平凡で冴えない男(主人公)」に「美人で周囲の羨望の的となる女(ヒロイン)」を関係させるための十八番であり素晴らしいものだが、「空から女が降ってくる」という非現実的な設定のせいで感覚が麻痺してしまうのか、主人公を中途半端なヒーローにしてしまうことが多々ある。そうなるともう台無しで、繰り返し繰り返し何度も何度も言っているように主人公を「どしゃ降りの雨の中、子犬が濡れているからといって傘を差し出し、自分はずぶ濡れ」に代表される偽善の優しさ、人間味が感じられない「いい人」にしてしまっては読む気が失せてしまう。そして本作の主人公もややその気がある(「きっとヒロインにだって幸せになれる方法があるはずだ」)ため「空から女が降ってくる」という極上の設定でありながら最下位となった。まあ本作の場合、作者の過去の作品(2003年度9位「マジカノ」)の主人公が非常に良かったのでその反動で厳しく評価しているのかもしれないが、どうにも受け入れ難かった。
 しかしそれ以外についてはさすがであって、「美少女として降臨した守り神(貧乳)」「主人公の幼馴染」「その守り神が主人公の学校にまでやってきてドタバタ」「ノリのいい脇役キャラたち」という使い古された設定をフルに動員した「ファンタジー学園ラブコメ」が自然に機能して、ストーリーが破綻する心配もなく安心して読むことができる。動と静、シリアスとコメディの使い分けも巧みである。ただし2巻まで読んだところ主人公がストーリーに積極的に関わるわけではなくまた「事件の鍵を握る」的な重要な役柄を与えられているわけでもないのが物足りなくもある。これではただの傍観者だ。ラブコメの面白さは「平凡で冴えない主人公」がなぜか事件の鍵を握り、その結果ストーリーを左右する存在になることにあるのだからな。
 とにかく本作は角川系が得意とする「ファンタジー学園ラブコメ」であり、マンネリであるが故に安心して読める良作である。ラブコメは常に奇抜で刺激的でなければならないわけではない。マンネリには安心感があり、それを武器とすることも大いにありえよう。常に刺激的なものに囲まれていては安心して眠れない。飽きるまで「お約束」をやればよい。飽きたとしても、またしばらくすれば「お約束」が恋しくなるのは、ラブコメとて例外ではない。
 しかし「オジイをはりつけてみました!」は面白かったな。
 
17位:お気に召すままご主人サマ/いとうえい秋田書店ヤングチャンピオン烈コミックス]
 メイドものがラブコメとして難しいのなぜかというとヒロインをメイドと設定することによって主人公とヒロインに最初から主従関係が強制されるからである。主人公がヒロインより優位に立つことがラブコメの肝であるが、それは精神的な恋愛関係においてであって、社会的な地位はヒロインの方が主人公より上であってもそれが対恋愛関係に影響しなければむしろ社会的な地位はヒロインが上の方がいいのである。むしろ「こんな社会的にレベルの高い女がなぜか平凡な男を好きになる」ということで最終的に主人公がヒロインより優位に立つことになる。しかしメイドがヒロインであるということは既に社会的に強制された関係が築かれているわけで、そこから無理なく恋愛関係に発展させるのは至難の業なのである。「命令と服従」の関係にありながら恋愛関係において通常の男女のように甘い関係に持っていくのは相当の困難が予想されるが、そこで本作が取った手法は(「逃げ」と後ろ指を差されても仕方ないが)ヒロインのメイドを「駄メイド」にすることであった。「メイド」という単語によってイメージされる「家事・炊事・掃除は完璧」からほど遠いメイドをヒロインにすることでヒロインがメイドであるという意識を希薄にして、結果「主従関係」も意識されず、それによって本作はメイドものではなく単なる「ドタバタラブコメ」に変換され存分に主人公とヒロインを上下左右に動かせることに成功しているのである。ただし致命的なことに騒がしくなり過ぎて「甘い関係」からほど遠いものになってしまっていて、1巻では主人公・ヒロインの裏に陰謀を臭わせることによって重量感が与えられているが、2巻からはひたすらドタバタが強調されてしまってこの順位となった。
 「ドタバタ」で「主人公が平凡な社会人」にヒロインを投入することでラブコメの平均的な展開となるのはある意味当然であり、安心して読むことはできよう。作者は過去にも日本ラブコメ大賞に顔を出している(2010成年部門3位、2009成年部門7位)のでラブコメが求める平均点はキープできており、そこに薄いとはいえ「メイド」の持つ特徴(ご主人様である主人公に忠実に仕える)を追加してラブコメとしての体裁を整えてはいる。しかし前述したように「駄メイド」を強調するあまり2巻以降はラブコメが求める「ときめき」がほとんど顔を出さないばかりか、騒がしさを強調して主人公はヒロインに蹴られまくる(服を脱がそうとすると「メイドがメイド服を脱いだらいかんのじゃ〜」云々)のであって、これではときめき以前の問題だ。宝の持ち腐れとはまさにこの事だ。少し残念であった。
 
16位:テツカレ/ハルタハナ[朝日新聞出版:ASAHI COMICS]
テツカレ (ASAHI COMICS ファンタジー)

テツカレ (ASAHI COMICS ファンタジー)

 ラブコメの絶対条件は主人公が「平凡で冴えない青年」であることで、そのため主人公を「オタク」にするのが一番手っ取り早い。そこに積極的なヒロインをぶつけ、周囲から羨望の的として見られるほどの美人がなぜかオタクな主人公に積極的に言い寄ることでオタク主人公の存在感は飛躍的にアップする。また本作は一般人から見ればどうでもいいことに異様に情熱を燃やす「オタク」と一般人の間にそびえ立つ「壁」を軽妙に料理していて、そこに目を見張るほどの美人をぶつけることで爆発的な化学反応を起こしている。
 この主人公は鉄道オタクであり、鉄道以外の世間一般のことにはほとんど興味がないから世間一般では美人でモテるはずのヒロインを前にしても何もしないことになる。そこでヒロインは反発し、自分に興味を示してもらうために過激な手段に出る(「私、逆境であればあるほどヤル気出るから。そのためには手段も選ばないし」)、周囲はヤキモキする…という使い古された展開が用いられているのが本作であるが、使い古されていようがこれこそラブコメの基本であることに変わりはない。そして前述したように「周囲にチヤホヤされる」はずの女が労力を使わなければならず、その労力が「主人公=オタク=読者」のために行われたということで読者は優越感を得る。またヒロインが主人公のことをよく知ろうと率先してオタク趣味(鉄道オタク)に手を突っ込み、しかし何が楽しいのかわからない…でも好きな人の趣味だから…ということで「オタク」と「一般人」の間にある落差もうまく料理しているのも高ポイントである。
 しかし作者が女である以上仕方がないことではあるが主人公を含めた男たちにはどこか違和感を感じる。高校生で女性と接することがほとんどないオタクならば実は頭の中はドスケベな事で埋まっているのであり、鉄オタだからスケベでないというわけではないのである。作者が男であればその男の感覚は自然とキャラクターに投影されるが女だとそうはいかず、結局不自然になってしまった。しかしまあそれでもこれはなかなか…と思いながら2巻を読んで恐ろしい事になった。1巻は楽しいドタバタラブコメ路線であったのに2巻でいきなりヒロインに想いを寄せる別の男が出てきて、主人公とその男が2人してヒロインを取り合うことになり、ヒロインはその別の男にも心揺れることになるのである。何だそれは。1巻であれだけ積極的に主人公をかき回しておいて(下着姿になったり唇を奪っておいて)なぜ2巻になったら他の男に心揺らぐのだ。そんなヒロインでラブコメになるか阿呆め。本作は1巻がラブコメであったが2巻で淫売女の物語に堕ちてしまった。1巻を読んだ限りでは3位あたりが妥当かと思っていたが結局この順位だ。2巻はさっさとブックオフに売ることにする。所詮女にラブコメはわからんのだ。
 
15位:魔界天使ジブリール4/フロントウィング蒼一郎秋田書店チャンピオンREDコミックス]
魔界天使ジブリール4 (チャンピオンREDコミックス)

魔界天使ジブリール4 (チャンピオンREDコミックス)

 事実上の前巻(2009年度8位)同様、本作も、いわゆる「ギャグ・お気楽さ・ゆるさ」を積極的に採用して読者へのサービスを怠っていないところをまず特筆しておきたい。そこにややぬるいラブコメ(同級生で幼なじみのヒロイン3人と同居で毎日ウハウハでラブラブ)と微温的なエロさ(「アモーレパワーはエッチすることで溜まる、そのアモーレパワーがヒロイン達をジブリールに変身させる!」。…恥ずかしがってはいけない)が加えられ、それによってこの作品全体が非常に「軽い」ものになる危険性を孕んでいるものの、連作全編を通して敵と味方による対立(と言うほど深刻なものではないが)が組まれているために適度に締まって退屈とは無縁であった。またコメディ色が強ければ強いほどストーリーの重要性が低下しラブコメに必要な「ときめき」が少なくなるが、本作の場合「コメディ」があくまでストーリーを映えさせるためのサービスにすぎないことをわきまえており、そのコメディ描写が必要以上にストーリーに絡みつくこともないので非常にテンポが良いのが頼もしい。
 だからこそ前巻よりキャラクターたちのデフォルメ感が強いのが少々残念でもある。まあこれぐらいならば愛嬌の範囲ではあるが、そのデフォルメのせいでラブコメに必要な緊張感や修羅場といった雰囲気が抑えられているのが少々物足りない。これではまるで仲良しクラブだ。最初から「同級生と同居してウハウハ」な設定で始まっているから仕方ないのかもしれないが、そうであっても「表面上は仲良く、しかし見えないところで静かな戦いが展開されている…」などにすればよいのであって、やり方はいくらでもあろう。1巻完結ものでそこまで求めるのは酷かもしれないが、ラブコメは奥が深いのであり、心を鬼にして本作をこの順位としよう。
 
14位:夏の前日/吉田基已講談社アフタヌーンKC]
夏の前日 1 (アフタヌーンKC)

夏の前日 1 (アフタヌーンKC)

 主人公は世間に対して少しふて腐れた感じの美大生(特に才能があるわけではないらしい。普通より少しうまい程度か)で、その主人公が年上の女性に惚れられて…という、読む人によっては甘美この上ない設定で本作は始まる。世間知らずの大学生主人公(「気が強い…年上の女に…優しく叱られたい」)は社会人で年上なヒロインの妖艶でかわいらしい雰囲気に参ってしまい、ヒロインは年上でありながら時々年下のように無邪気な顔を見せたりするので主人公はますますその魅力に参ることになる。これは確かにたまらないが、本作はもっともっと妖艶さや色気を(ヒロインのみならず作品全体が)醸し出すことができたはずなのだ。作品全体がどことなく淡白な感じがするのが不満である。また人物、風景、ストーリー、全てが同じ視点で緩やかに描かれているために性交渉の場面も読者にせまってこず、主人公とヒロインの関係すらも緩やかなものに見えてしまっている。細い糸でフワフワ浮いている風船のようで、読む方は気が休まらない。ラブコメとはとかく曖昧で不安な恋愛関係をヒロイン側が強力に好意を持つ(ということが読者にわかる)ことによって読者の不安を解消させるものでなければならないのである。もう少し強弱というか、主人公側(読者側)が精神的に優位に立つようにヒロイン側を追い込むなり押し出すなりしなければいつまで経ってもフワフワなままであろう。
 更に言えば性交渉による対話を淡白に描写することによってヒロインのみならず主人公も活きていない。性交渉とは性欲を満たすことであるが、それが「軽く」処理されているために引っ張るものがないのである。ラブコメは読者の性欲処理も兼ねているのであり、その性欲処理をヒロイン側の積極さに委ねることで主人公(読者)側の性欲を解消させ、且つその性欲をヒロイン側の事情によるものということで後を引かないものにすることが肝心なのである。とは言えこの淡白さによって年上女性との逢瀬という淫猥さや罪悪感が中和され、恋愛関係における初々しいときめきや新鮮さを表現できているのも事実ではある。また主人公の不器用さ(社会と折り合いをつけるはずがいつの間にか外れ、器用にやっているはずが不器用に逆戻りとなって悩む)はまさに大学生特有の贅沢な悩みであるが、それは俺が社会人だからそう思うのであって今の大学生が読めばそれなりに感じるところもあるだろう。そしてその主人公の苛立ちを包んでしまうような年上ヒロインの魅力と、そのヒロインとの恋愛によって夢見心地に浸ることができた。何だかんだでいい作品である。
 しかしこの主人公は「美形」という設定なのだろうか。画力というかクオリティ的に無理があろう。
 
13位:妹・だ〜りん/堀博昭少年画報社:YCコミックス]
妹だ~りん (ヤングコミックコミックス)

妹だ~りん (ヤングコミックコミックス)

 何度も言うようにただ性交渉描写があればいいわけではないし、ハーレムにすればいいわけでもない。「平凡で冴えない男(主人公)」が、なぜか女にもてなければならず、その女たちは心の底から主人公を愛さなければならない。性交渉描写も儀礼的なものではなく主人公との愛の対話として描写しなければならない(たとえ複数のヒロインが主人公と絡むことがあっても)。またヒロイン側が快楽を貪る描写も極力抑えなければならない。あくまでメインは「平凡で冴えない男=読者」の方なのであり、主人公に快楽を与えるスパイスとしての「快楽を貪る」描写ならいいが、性交渉自体が目的となってはならないしヒロインの淫靡さを強調するのもならない。あくまで主人公(読者)とヒロインが画面に映らなければならないのであり、その範囲内ならヒロインの淫靡さを表現してもよい。ヒロインの悦楽は主人公に抱かれていることに起因するものでなければならないのである。またハーレム描写にも気を付けなければならない。女を複数、それも2人ではなく3人も4人も入れることによってどうしてもレズ的描写が出てしまうからで、例え一瞬であろうともヒロインが主人公以外の人間によって快楽を表明することは「寝取られ」になり、ラブコメの原則を著しく傷つけるものとなる。「寝取られ」はラブコメでは絶対にやってはいけない。主人公=読者側が置いてけぼりになってしまえばそれはもうラブコメではないからである。
 やたら「〜でなければならない」を連呼してしまったのは本作を評価するにあたってラブコメの条件を整理したかったからである。とは言え本作自体は特に難しく考えるような作品ではない。主人公にヒロインたち(妹たち)がやってきていきなり主人公と性交渉に及ぶようになり、「妹」の持つ甘酸っぱさや可愛らしさも考慮せず「妹になりたい」と言って股を広げ、それらは「妹」の持つ神聖さを台無しにしているようでややシラケてしまうものの、一方でその性交渉はねっとりといやらしく、また各ヒロインはやたら「好き」と言って主人公への執着が本物であることを証明しているのでその「ねっとりといやらしい」描写が活き、上々の出来となっている。
 しかし後半からが問題であって、盛り上がりを出すためかヒロインの一人が他のヒロインとレズ的行為を演出してしまうのであり、これがまた前半のように「ねっとりといやらしく」なるのだからたまらない。それはやってはいけないのである。繰り返すが、恋愛関係においても性的関係においても主人公がヒロインより上位に立つことがラブコメの最大の魅力なのであって、一瞬であっても主人公以外の人間が主人公より上位に立てば魅力は大幅に減退されるのである。それでも最後は正常なハーレムとなったから良かったが、これではとても10位以内に入れることはできない。残念なことである。
 
12位:ハッピーネガティブマリッジ/甘詰留太少年画報社:YKコミックス]
ハッピーネガティブマリッジ 1巻 (ヤングキングコミックス)

ハッピーネガティブマリッジ 1巻 (ヤングキングコミックス)

 さてプライベートなことを言わせてもらうが俺は「28歳にもなって女の経験がない男」である(風俗経験はそれなりにある)。そんな俺は「(俺のような)平凡で冴えない主人公に美人なヒロインがやってきて〜」というストーリーをひたすら追い求めているので結婚は不可能であろう。まあ俺の場合はそれ以外にも様々な問題を抱えているのであきらめもつくが、やはり時々「独身の悲哀」を感じることはある。だから「30歳の独身男を主人公にして、美人なヒロインとハッピーなマリッジを迎える」(…と思うが、1巻しか読んでないので最後どうなるかはわからない)という本作は非常によろしい。ただし所々に違和感を感じたのも事実で、主人公は30歳になっても独身で独身寮を追い出されるかどうかの瀬戸際に立たされているが、どうも読んでいて悲愴感が感じられないのである。恐らく1話早々に主人公に見合い話が転がり込んでいるからであろう。今や見合い話に到達しない男が大多数なのだ(俺も含めて)。また主人公はお見合い用の写真を見た途端にヒロインの美貌に恋に落ちてしまうが、そうすると「都合の良いラブコメ」感が醸し出されてしまうので薄かった悲愴感が更に薄れてしまった。こういう場合は「写真ではブスだけど実際は…」とした方が良かったのではないか。結局読後に印象に残ったのは作者が磨き上げてきた「エロい描写」であって、それはそれで素晴らしいが、やはり本作のポイントは「悲愴感をいかにして出すか、そしてそれをどのように救済するか」ではないか。
 もちろん以上のことはこの「日本ラブコメ大賞」における評価であって、日本ラブコメ大賞にエントリーすらされない糞のような作品に比べれば本作もまた光り輝いている。しかし過去に何度もこの「日本ラブコメ大賞」にランクインされている作者(2005年9位、2006年24位、2009年7位)だから言わせてもらうが、残念ながら本作はラブコメとして中途半端なのである。設定、キャラクター、画力が良ければいいというものではない。それらをまとめ上げて「30にもなって女の経験がない」男を救済しなければならず、たとえヒロインが「主人公好き好き大好き」でなくても何となく主人公に気がある風に描かなければならない。もちろん本作のヒロインが主人公を好ましく思っていることは何となく読者にはわかるが、主人公は「期待して裏切られるのも期待されて裏切ってしまうのも面倒くさい。いや…怖い」という臆病な男なのであり、その男を救済するにはヒロインをもっと積極的にしなければいけなかったのである。ラブコメとは日々劣等感を感じているモテない男のためのものであり、救済の物語なのだ。「モテない男」である主人公(=読者)に希望を抱かせるものでなければならず、その手っ取り早い方法が「空から女が降ってくる」であるが、その方法を取らないのであればそれ以外のあらゆる方法を使って主人公を納得させるべきである。設定を整え、偶然を駆使して、主人公(=読者)に愛を与えてこそラブコメなのである。
 
11位:思い立ったら乳日/琴義弓介竹書房:BAMBOO COMICS]
思いたったら乳日 (バンブーコミックス NAMAIKI SELECT)

思いたったら乳日 (バンブーコミックス NAMAIKI SELECT)

 繰り返すがラブコメとは「美人でスタイル抜群の女がなぜか平凡で冴えない男に積極的に言い寄ってくる」ものである。それによって男(主人公)は「美人でスタイル抜群な女に愛されているのだから自分は特別」というステイタスを獲得できよう。そのためヒロインのステイタスは高ければ高いほどいい。本作のようなグラビアアイドルなヒロインというのもステイタスがあってなかなかよい。「グラビアアイドルを妻にする」というのはモテない男の願望の最たるものだが、これだけ大量にグラビアアイドルが溢れる昨今ならばそれほど不自然でもない。これは盲点であった。
 しかし本作の特徴はそのグラビアアイドル(結婚して引退)がとにかく性欲旺盛であることで、最初から最後まで本作は人外のボリュームを誇る巨乳を使ってのべつまくなし夫(主人公)にセックスを要求するだけと言っても過言ではないものであった。もちろんラブコメとはヒロイン側が積極的に出るものであるからこのようにヒロインが淫乱であってもいいのである。更に本作ではヒロインは既に「妻」となっており、ヒロインが主人公とのセックス依存症となっていてもどこか微笑ましさがある。またそれによって夫(主人公)は精神的に優位に立てるばかりか、後半で他のヒロインと性交渉を持っても「元グラビアアイドルで性欲旺盛な妻」がいながら他の女にも手を出せるということで読者の支配欲をかき立てることにも成功している。素晴らしい。これで主人公を暑苦しい奴ではなくもう少しぬるめの性格にしてくれたら1位だったのだが。
 ラブコメの融通無碍さは、ラブコメが「男と女がコメディ的な騒動に巻き込まれながら恋愛をする」もので、その恋愛のゴールが多くの場合「結婚」でありながら、ゴール後のステージである「夫婦」という設定でも始められるという点にある。「妻」というどことなく生活臭がする言葉と「ヒロイン」という単語が持つ華やかさは本来両立しないが、既に「夫婦」であることの安心感、「性交渉することが社会的に認められた」ことによる解放感から本作のように妻を淫乱(結婚式の直前にセックスを要求する)にすることで強烈なラブコメに仕立て上げることもできる。ラブコメとは男(主人公)が女(ヒロイン)よりも精神的に優位に立つという思想であるから、「夫婦であること」によってヒロイン側を拘束し(不倫には社会的な制裁が不可避である)、それによって主人公(夫)は精神的に優位となることこそ本来のラブコメの姿なのであり、実は「夫婦もの」こそラブコメの真の姿なのである。
 それにしても、乳でかすぎ。

1 生き延びよ 

 この時期になるといつも言っていることだが今年も多くの人が死に、その死んだ人は俺以外の誰かであって俺ではなかった。俺は生き延びたが俺以外の誰かは病気で死んだのであり津波によって死んだのであり、少なからぬ人は自ら命を断って死んでいったのである。そのような膨大な死を前にしてもやはり俺は日本ラブコメ大賞などという阿呆の極致、キチガイの極致のようなことを今年もやるのであって、そうすることで生き延びたことを実感するのである。
 
<一般部門>
彼と彼女の(オタク)2/村山渉[幻冬舎幻冬舎コミックス
大平面の小さな罪/岡崎二郎エンターブレイン:BEAM  COMIX]
夏の前日/吉田基已講談社アフタヌーンKC]
いらっしゃい青春/はしもとてつじ[久保書店:ワールドコミックス]
団地妻さんのしあわせ/ジェームスほたて少年画報社:YC COMICS]
彼女はソレを我慢できない/イワシタシゲユキ[Bbmfマガジン:GAコミックス]
彼女で満室/真鍋譲治竹書房:BAMBOO COMICS]
かみせん。/百瀬武昭富士見書房:ドラゴンコミックスエイジ]
ノエルの気持ち/山花典之[集英社ヤングジャンプ・コミックスBJ]
はかない!/えむあ[少年画報社:YCコミックス]
思い立ったら乳日/琴義弓介竹書房:BAMBOO COMICS]
ハッピーネガティブマリッジ/甘詰留太少年画報社:YKコミックス]
魔界天使ジブリール4/フロントウィング蒼一郎秋田書店チャンピオンREDコミックス]
テツカレ/ハルタハナ[朝日新聞出版:ASAHI COMICS]
幼なじみガール/usi[芳文社芳文社コミックス]
お気に召すままご主人サマ/いとうえい秋田書店ヤングチャンピオン烈コミックス]
キャサリン/ATLUS・川上亮富士見書房:ドラゴンブック]
妹・だ〜りん/堀博昭少年画報社:YCコミックス]
キャサリン 公式ビジュアル&シナリオコレクション ヴィーナスモード[アスキー・メディアワークス
つぼみな奥さんポン貴花田双葉社:ACTION COMICS]
LOVE LOOP/かたせなの[少年画報社:YCコミックス]
 
<成年部門>
らぶ・かん/憧明良茜新社:TENMA COMICS]
純愛以上レイプ未満 りとるらびっつ/ドバト[オークス:XO COMICS]
ままちあ/LAZY CLUB[久保書店:ワールドコミックススペシャル]
年刊中年チャンプ 初期作品号/中年[MAX:ポプリコミックス]
ビーナスラプソディ/春城秋介[ティーアイネットMUJIN COMICS]
First Love/尾鈴明臣茜新社:TENMA COMICS]
相思相愛ノート ニサツメ/フクダーダコアマガジンメガストアコミックス]
Virgin Hunt ばーじんはんと/さいだ一明エンジェル出版:エンジェルコミックス]
恋愛ほりっく/久水あるた富士美出版:富士美コミックス]
会長の秘蜜日記/琴吹かづき三和出版:SANWA COMICS]
脱・妹宣言/EBA[マックス:ポプリコミックス]
Only You/青木幹治コアマガジン:ホットミルクコミックスシリーズ]
恋糸記念日/たかやKi[コアマガジンメガストアコミックス]
美人な義母と強気なクラスメート/OKAWARI[茜新社:TENMA COMICS]
デキる妹はイヤですか?2/089タロー[キルタイムコミュニケーション二次元ドリーム文庫